【記者座談会・鉄鋼この1年】〈(6)海外〉新日鉄住金、中国宝武と関係深化

ティッセン、タタなど再編進む

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A 高炉大手の海外事業で見ると、新規で決まった案件というのは、前回の「輸出」編でも触れたJFEスチールのミャンマー薄板建材事業くらいだったのかな。

D ここしばらくは既存事業の立ち上げや立て直しに追われてきたからね。ただ、そのかいあって海外事業がかなり収益に貢献してきている。

F ちなみにJFEのミャンマー事業で、日本の商社だけでなくメランティ・スチールという会社が参画しているけど、どんな会社なの。

B ブルースコープ・スチール出身のセバスチャン・ランゲンドルフという人が昨年シンガポールで興したベンチャー企業ということだね。合弁会社の中でも重要な役どころを担うんじゃないかな。

E ミャンマーではJFEエンジニアリングが長年の実績を持ち、鋼構造事業も展開している。JFEとしては先行している市場で、強化ポイントとしてきたアセアンでの薄板建材拠点に道筋を付けたことになる。

C 4月から薄板輸出部にある第3薄板輸出室のミッションが変わったしね。アフリカや中南米向け輸出営業を第2室へ移し、第3室は昔あった輸出企画をやるようになった。

B 日本の内需の先行きを考えれば、今のうちに海外市場で「種まき」をしておくのは大事だよね。

D 時間をかけて関係を築いた好例が、新日鉄住金と中国宝武鋼鉄集団が今年で友好協力40周年を迎えたことだろう。

A 今回は上海で内々の記念活動が行われたけど、日中双方ともそうそうたるメンバーが出席していたね。宝鋼のトップだった謝企華さんとか久々に見る顔だ。

F 今年の共産党大会で決まった人事では、宝山鋼鉄系の人が重用されている。宝鋼の董事長から工信部副部長へ転じた徐楽江氏は中央委員に、今の宝武の董事長を務める馬国強氏は中央委員候補に昇格している。

B 以前は上海閥として習近平国家主席から目を付けられていた感じだったが、宝鋼と武漢鋼鉄の統合をやりきって国営企業の構造改革に貢献した。中央政府内でも株が上っているということだろう。

E 新日鉄住金としても、武鋼と組んでいたブリキ合弁のWINスチールを宝鋼系と一体化し、事業基盤が強化できた。中国ブリキ市場における構造調整にもつながる。

A 特徴的な海外事業では、5月に東洋鋼鈑がトルコでの合弁会社でホットコイルからの一貫生産を始めた。カラー鋼板や亜鉛めっき鋼板に続き、ブリキも出荷実績を上げてきているみたい。

D 特殊鋼関係では、神戸製鋼所のタイ線材圧延合弁が普通線材に続いて今夏から特殊鋼線材の生産とサンプル出荷を始め、三菱製鋼のインドネシア合弁も夏場から丸鋼の生産を始めている。

F 日立金属の中国ネオジム磁石合弁は今春に稼働開始し、量産受注の段階まで来ている。いずれも従来とは違う切り口の海外合弁事業だ。

C 特殊鋼棒線の二次加工など下工程では、愛知製鋼が中国鍛造合弁でラインを増強し、大同特殊鋼がタイ子会社で型鍛造品の量産を開始した。山陽特殊製鋼はメキシコの素形材工場を立ち上げたし、新日鉄住金の米国CH鋼線合弁は稼働間近。三菱製鋼は12月に車用ばね事業で欧州企業の買収を決めている。

B ステンレスでは何といっても中国の青山鋼鉄の増産プロジェクトが目立つが、日系関連ではマレーシアのバル・ステンレスで3%株主がメタルワンから阪和興業に代わった。メタルワンは日商岩井時代からアセリノックスと関係が深かっただけに、時代の流れを感じさせたね。

A 海外メーカーの動きでは、ティッセン・クルップとタタ製鉄が欧州事業の統合で合意した。

E 交渉自体は昨年から行われていたけど、英国のEU離脱問題や年金問題でなかなかまとまらなかった。タタのトップがチャンドラセカラン氏に代わり、年金債務を片付けたことで実現した。

F タタは本拠のインドで頑張らないといけないからな。後発だったはずのJSWスチールに規模でだいぶ差をつけられている。

D そのインドではモディ政権が銀行の不良債権を整理しようとしていて、これに伴う鉄鋼メーカーの身売りが行われようとしている。エッサールやブーシャンといった大手をどこが買うかで、インドの勢力図もだいぶ変わる。

C 基本はインドの国内勢が買うことになりそうだけどね。ただ新日鉄住金はタタ、JFEはJSWと提携しているから、間接的には関係してくるかもしれない。

A 今でこそ世界的に鉄鋼業界の業績は回復しているものの、ここ数年厳しかった時に過剰債務を抱えたメーカーでは、この手の話が今後も出てくるだろうね。

B デッドエクイティスワップが行われたタイのサハビリヤとか、来年末までがワークアウトの期限になっている韓国の東部製鉄で銀行団がどうするか。いずれ動きが出てくるかもしれない。

D 一方、資金力のある会社は買収や設備投資を活発化している。米国のニューコアや中南米のテルニウム、新興勢力では英国のリバティ・ハウスがそうだった。

F アルセロール・ミッタルもイタリアのイルバを買収するし、懐に余裕が出てきた様子だな。

E テルニウムはティッセンからブラジル高炉のCSAを買収。メキシコでは熱延ミルやCGL増設を決めた。CEOも来年代わるし新日鉄住金と争っているウジミナスの経営権問題にも関わってきそうだ。