『POPEYE  No. 849 ガールフレンド』 思えば遠くへ来たもんだってやつ?

「毎日が小さな革命だ」。中学生の時に初めて買った雑誌「Olive」の表紙に、こう書いてあった。その言葉にいたく感動して、レジへと直行したのを覚えている。今から20年前のことだ。

 で、20年後。アラフォー目前の手元には珍しく「POPEYE」ですよ。多分人生初。なんでかっていうと、特別付録で姉妹雑誌「Olive」が付いてくるから。1982年に創刊し、「リセエンヌ」や「ガーリー」、「オリーブ少女」など、新しいスタンダードを生んだ伝説の雑誌が限定復活を果たしたわけですよ。

 PERSON'Sじゃない!のは百歩譲っていいとして。GUCCIとクロムハーツって……。「Olive」を手に取った時の、最初の衝撃がこれ。広告が、ポップなカジュアルブランドからハイブランドになっているのだ。

 驚きはまだまだ続く。紹介されている商品までもが、どれもえげつないほど高いのだ。あ、これ可愛いなって見つけたヤエカのルームウェアが上下合わせて68000円、ティファニーの腕時計が250万円。バカ!!

 そんな購買意欲ダダ下がりの商品紹介のページの後は、カルチャーページ。ユニークで新しい文化に精通している一般の(ように見せかけて、業界人の娘とかだったりする)高校生、大学生、若手アーティストによる座談会は、そういえば昔も読んだ気がする。話している内容はまったく異なるが、自分が新しいものをどれだけ知っているか、知識の多さを競い合うような対談であるのは今も昔も変わらないのね。「サントラのセンスがいいといえばソフィア・コッポラだよね」なんていう上から目線も懐かくって微笑ましい。

 そして巻末には我らオリーブ少女のポップスター、小沢健二によるエッセーが掲載。かつて本誌で連載していた「ドゥワッチャライク」の復活だ。その内容があまりに衝撃的で、思わず息をのんだ。オザケン全盛期の「オリーブ少女」について語っているからだ。そしてそれは、誤解を恐れずに言えば決して好意的ではない。「小沢くんと結婚したい」そう言う少女のことを、邪悪だと彼は言い切る。

 私たちは大人になってしまった。若さ故の可愛さも傲慢さも邪悪さもしたたかさも、遠い遠い光の彼方へおいてきてしまった。若者たちの言ってる言葉はさっぱりわからず、チープなおしゃれはとっくの昔に似合わなくなっている。そんな時の流れについて思いを馳せてしまう一冊だった。だって当時は、オザケンがこんな辛辣な本心を抱いていたことも、小山田圭吾の息子が高校生になってることも、リバーズ・エッジが映画化されることも、自分が35歳になることも、別れに胸を痛めることも、そんなん繰り返してまだ独身子なしだってことも、全部想像してなかったもんね。思えば遠くへ来たもんだってやつ? そんな風に思い返してみると、人生、なんだかんだ不思議で楽しい。

 そんなことを思い起こさせてくれる「Olive」は、やっぱり青春だったんだなと改めて思う。ありがと「Olive」!……あ、POPEYE本誌の話、一切してなかった! まぁそれは、追々させてください……。

(マガジンハウス 815円+税)=アリー・マントワネット

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