「星座公園」の謎に迫る 長崎・ダイヤランド 12星座の「うお座」なし

 長崎市南部の高台にある住宅地「ダイヤランド」。ここにある13の公園のうち、最も広い南部地区公園を除けば、12の公園全てに星座の名前が付いている。通称「星座公園」。だが、占いなどでおなじみの「12星座」の中で唯一、うお座(2月19日~3月20日)だけがない。代わりに存在するのが「おりおん座」。なぜなのか、探ってみた。

 まず、公園を維持・管理する市に尋ねた。「見当もつかない。開発会社の意向では?」。担当者は地図を見ながら首をかしげた。

 ダイヤランドは、1981年、当時の小ケ倉町の一部などを開発して造成し、その過程で公園も整備。84年から分譲が始まり、現在の人口は4972人。過去の新聞をめくると、開発業者は「三菱開発(東京)」とあったが、この企業は現存していない。開発に関わった別の業者に聞いても「記録は残っておらず、当時の社員は退職した」。

 複数の地元住民に聞いても分からなかった。ダイヤランドまちづくり連絡協議会の中野敦之会長(80)は「ここの住民は分譲後に移り住んだ人ばかり。開発当時のことは、みな知らないと思う」と話す。

◆ ◆

 お手上げか、と思っていた時に、雑誌の占い欄が目に留まった。12星座ごとに占いの内容が記されていたが、その順番は、おひつじ座、おうし座、ふたご座-の順。うお座は一番最後だった。日本占術協会(東京)のアイラ・アリス常務理事によると、12星座は1年の始まりを春分(3月21日ごろ)とした古来の西洋の暦を基にしており、春分の時期に当たるおひつじ座(3月21日~4月19日)から始まり、最後はうお座で終わるという。

 公園の開設日を調べた。開設順は、おりおん座公園を除き、12星座の並び通りだった。うお座は12星座の最後のために、漏れたのではないか。

 市に保存され、ダイヤランドの造成完了後に作成された図面を閲覧した。そこに公園名は記載されていなかったが、公園用地にはそれぞれNO1~15までの番号が割り振られていた。

 NO15? 目を疑った。ダイヤランドにある公園は13。図面上のNO14と15の用地は隣接しており、二つ合わせて現在の南部地区公園に相当した。だが、それでも一つ足りない。図面をよく見ると「NO13」の公園が、どこを探しても見当たらなかった。

 そこから導き出した推論はこうだ。「NO13」の公園、つまり「うお座」となる公園が、開発の計画段階では存在した。おりおん座公園はグラウンドのような広さで、当初は12星座の公園とは別の扱いで整備された。その後、うお座となる公園の整備計画は何らかの理由で断念。そのために12ある星座公園にうお座がなく、代わりにおりおん座が残った-。ただ、この推論を裏付けることはできなかった。

◆ ◆

 取材中、地元の市立南長崎小3年生が今年、総合学習で星座公園について調べたと聞いた。同校へ連絡すると、子どもたちは一生懸命、地域の住民らに聞いて回ったという。結果的に、うお座公園がない理由は分からなかったが、同校の松尾惠子教頭は言った。

 「12星座の中から、わざと一つを外したのではないでしょうか。今回の3年生のように、疑問に感じた子どもたちが先輩やお年寄りらに尋ねることで、地域のふれあいが深まる。そんな意図を感じるんです」

 なるほど。うお座生まれの人には悪いけど、それが真実だったらすてきな理由だ。そう思いながら、星座公園を巡る調査を終えた。

星座公園の一つ、てんびん座公園=長崎市ダイヤランド4丁目

© 株式会社長崎新聞社