「打率」では測れない打者の能力 トリプルスリーの2人が際立つ数字

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:藤浦一都】

今季「選球眼」際立った打者は

 打者の選球眼を表す指標にIsoD(Isolated Discipline)がある。四球による出塁率だ。出塁率から打率を引いた単純な数値だが、ここからは打者の特質が見て取れる。

〇今季パ・リーグ、規定打席以上のIsoDトップ10

1 柳田悠岐(ソ)打率.310、出塁率.426、IsoD.116
2 T-岡田(オ)打率.266、出塁率.374、IsoD.108
3 角中勝也(ロ)打率.269、出塁率.375、IsoD.106
4 中村剛也(西)打率.217、出塁率.319、IsoD.102
5 中田翔(日)打率.216、出塁率.310、IsoD.094
6 鈴木大地(ロ)打率.260、出塁率.350、IsoD.090
7 島内宏明(楽)打率.265、出塁率.352、IsoD.087
8 中村晃(ソ)打率.270、出塁率.355、IsoD.085
9 デスパイネ(ソ)打率.262、出塁率.347、IsoD.085
10 西川遥輝(日)打率.296、出塁率.378、IsoD.082

 リーグを代表する強打者が並ぶ。こうした選手たちは、投手が長打を警戒することもあり、四球が増える。パはソフトバンクの柳田が1位だった。中村剛也は今季打率が低迷し、本塁打も27本と彼としては少なかったが、それでもIsoDは4位。投手陣は警戒していた。今季打率最下位の中田翔にも同様のことが言える。

 鈴木大地は11本塁打と長距離打者とは言えないが、IsoDは.090。彼の場合、投球をじっくり見極めていたことがわかる。打線が低迷する中、孤軍奮闘していたのだ。

〇今季パ・リーグの規定打席以上のIsoDワースト5

23 源田壮亮(西)打率.270、出塁率.317、IsoD.047
24 大田泰示(日)打率.258、出塁率.302、IsoD.044
25 小谷野栄一(オ)打率.277、出塁率.320、IsoD.043
26 上林誠知(ソ)打率.260、出塁率.302、IsoD.042
27 松本剛(日)打率.274、出塁率.314、IsoD.040

 端的に言えば、これらの選手は「早打ち」だったと言えよう。四球を選ぶよりも打って出るタイプの打者たちだ。それで打率が良ければ言うことはないが、平凡な成績であれば、出塁数は減り、貢献度もより少なくなる。

 セ・リーグも見ていこう。

ヤクルト・山田哲人【写真:荒川祐史】

山田は今季不振もIsoDトップ、積極性際立ったロペス

〇今季セ・リーグ、規定打席以上のIsoDトップ10

1 山田哲人(ヤ)打率.247、出塁率.364、IsoD.117
2 筒香嘉智(De)打率.284、出塁率.396、IsoD.112
3 福留孝介(神)打率.263、出塁率.373、IsoD.110
4 田中広輔(広)打率.290、出塁率.398、IsoD.108
5 バレンティン(ヤ)打率.254、出塁率.358、IsoD.104
6 鳥谷敬(神)打率.293、出塁率.390、IsoD.097
7 糸井嘉男(神)打率.290、出塁率.381、IsoD.091
8 丸佳浩(広)打率.308、出塁率.398、IsoD.090
9 鈴木誠也(広)打率.300、出塁率.389、IsoD.089
10 梶谷隆幸(De)打率.243、出塁率.327、IsoD.084

 今季打撃不振が目立った山田哲人が1位。四球もリーグ2位の91個だった。投手陣は山田を警戒していたのだ。筒香がそれに次ぐ。上位には長距離打者が並ぶが、その中で田中広輔が4位につけているのが目立つ。田中は8本塁打だが、今季、セの出塁率1位、選球眼はリーグトップクラスだ。今季1000四球を達成した鳥谷敬も6位につけている。

〇今季セ・リーグの規定打席以上のIsoDワースト5

24 安部友裕(広)打率.310、出塁率.354、IsoD.044
25 菊池涼介(広)打率.271、出塁率.311、IsoD.040
26 京田陽太(中)打率.264、出塁率.297、IsoD.033
27 倉本寿彦(De)打率.262、出塁率.292、IsoD.030
28 ロペス(De)打率.301、出塁率.330、IsoD.029

「たな・きく・まる」の中で、「たな」と「まる」はじっくり球を見ていくタイプだが、菊池は早打ちであることがわかる。また、DeNA勢が2人。DeNAのアレックス・ラミレス監督は現役時代、ほとんど四球を選ばない積極打法だったが、監督になってからも四球を選ばない選手を躊躇なく起用していることがわかる。

 じっくり球を見極める打者、積極的に打っていく打者、一長一短があるが、IsoDを使えば打者の持ち味がくっきりと浮かび上がる。一つの指標として有効だと言えよう。

(Full-Count編集部)

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