医療・就労に大きな壁、見えない「聴覚障がい」の現状

一般社団法人聴サポ代表の山内歩実さんはクラウドファンディングサイト「Readyfor(レディフォー)」で、難聴者・聴覚障がい者向けに医療と就労をサポートするプロジェクトを始めた。募集金額は200万円で、締め切りは2018年1月12日。同法人の立ち上げとプロジェクトを開始したきっかけは、友人が突然聴覚を失ったことにある。医療と就労面において理不尽な環境に置かれ続ける状況に問題意識を感じたという。法人の立ち上げとプロジェクトの経緯について寄稿してもらった。

聴サポ代表の山内さん

友人が聴こえなくなった理由は、指定難病の1つである神経線維腫症Ⅱ型。両耳の聴こえを失ってからはじめて、「難病」と判明したそうだ。

この難病に関わらず、難聴の要因には様々なものがあり、「原因不明」とされることは多い。しかし、少し聴こえが悪くなってきた頃に原因不明とされ、数年後には失聴してしまったら誰に否があるのだろうか。専門医を探さなかった難聴者自身だろうか。

一方、障がい者の就労については、2016年4月から「改正障害者雇用促進法」が施行され、障がい者を雇用する会社は増えた。しかし、聴覚障がいに対して手話や筆記・筆談などの配慮のある雇用体制があるかというと、そうではない。他の障がいと比べ、見ただけでは障がいの程度を判断しがたいことも要因の一つにあるだろう。見えない「聴覚障がい」へのフォローはされづらいというのが現状だ。

このような現状・課題が解決されないままでいることに、強い理不尽さを感じ、このままにしたくはない、そう強く思った。「聴覚障がい」とこれまで触れることのなかった自分自身だけれども、だからこそ、同じように「聴覚障がい」と関わりのなかった人・病院・会社に対して一歩踏み込む提言ができるのではないか、と考えた。

そこで、医療と就労にかかわる専門家と難聴者・聴覚障がい者をつなぐ場所をつくり、難聴医療・聴覚障がいのサポートについて理解し共感する人・病院・会社を増やそうと、2017年5月に、一般社団法人聴サポを設立した。

現在は、全国の難聴専門医が発表されている難聴医療にかかわる情報をSNSで発信する情報発信をメインに行っている。

今後の活動としては、「医療」「就労」の2本柱で考えている。「医療」面では全国の難聴専門医とのつながりを広げ、そのうえで難聴者と専門医を直接つなげる取り組みを行う。
 
「就労」面では、目標は聴覚コミュニケーション体制を整え一般就労と同等の環境を提供する会社と「働きたい聴覚障がい者」をつなぐこと。ただし、障がい者の就労については一朝一夕で行えることではなく、多くの団体や企業・行政との連携、地道な活動が必要になる。

だからこそ、 まずは自社がその模範となりたい。世界で最も普及している人工聴覚器・人工内耳を装用し、片耳の聴こえを回復させた聴サポ飲食担当を筆頭に、飲食イベントや飲食店の開業を2018年度に行う予定だ。
 
見えない「聴覚障がい」を、少しでも、身近なものにしたい。医療・就労のサポート事業を行いながら、その理念を達成するべく、日々邁進している。

現在挑戦しているクラウドファンディング」は、2018年1月12日までの期間限定のWEB募金スタイル。目標金額200万円に対し、12月22日時点で、28%の達成率だ。期限まで目標金額に達しない場合、このプロジェクトを開始することができなくなってしまう。

見えない「聴覚障がい」を、あなたにとって、社会にとって、少しでも身近なものにするために。ぜひ、ご協力願いたい。

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