【記者座談会・鉄鋼この1年】〈(9)流通・市況〉商社系流通、国内事業再編を加速

鋼材市況は値上げ環境整う

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A 鋼材市況は総じて年初めと秋口以降に上伸。その間は踊り場となり一部品種は下押した。その推移は別表の通りだが、改めて分かったのは「値段は需給で決まる」のだけど、供給起因ではなく需要起因によるタイト化でなければ持続性や力強さを欠くということ。

B 確かに今ようやく店売り市場でエンドユーザー向け販価改定が本格化し始めたが、それは末端に仕事が出てきたことで品薄が顕在化し「ほしい時にほしい量を確保しづらい」と実感した買い手が値段よりも玉の手当てを優先するようになったから。売り手も「値上げ環境が整った」と実感でき、仕入れ値上昇分の売り値転嫁に踏み出せるようになった。

A 年明け以降、この動きを加速するためにも流通各社は「メーカーの大口ヒモ付き価格改定を目に見える形で」と願っているよ。

B 鉄産懇の会見報道や高炉の品種値上げ表明をみれば、メーカーも昨年来「不退転で取り組んでいる」と言うし「客先理解も得ている」んでしょ。値上げの市場環境整備はメーカーにとっても同じだし「機は熟した」って言うんだから、価格改定交渉が前進していることを示さないと。

A 値上げにせよ引受調整にせよ、店売り先行は分かるが「追加」も店売り主体だとさすがに当該流通が「早くヒモ付きも」と言うのもうなずける。タイミングはあるだろうが、バランス重視の政策を切望する流通の声は強いね。

D 流通業界の話題としては総論で「日鉄住金物産と三井物産の件」に触れたが、住友商事とメタルワンも「2018年度前半をめどに両社の国内鋼管事業統合」に向け検討を開始。JFE商事は国内厚板強化の一環で新潟、北陸の子会社事業を再編した。JFEグループではリバースチールの全事業を分野別にグループ会社などへの移管を決め、つい先日は伊藤忠丸紅鉄鋼と住商が広島地区でコイルセンター(CC)事業再編・統合計画を発表した。

B 成熟した国内市場で足元の「順風」を受け止めつつ、いずれ再来するだろう不況の「逆風」も想定し、それに耐えられる基盤構築に向け、商社が「垣根」や「枠組み」にこだわらず協業を含めた事業体制づくりを今から模索しようとの一環だろうね。

D ステンレス分野でも伊藤忠丸紅鉄鋼が三井物産スチール―日新製鋼系列のMSSステンレスセンターの新潟拠点を買収し、阪和工材と共同出資の「山文ステンレス」を4月に発足。阪和興業は19年初頭の操業予定で中国の大明国際グループと浙江省で鉄鋼総合加工合弁に乗り出す。

C メタルワンと三井物産スチール共同出資のエムエム建材は、東日本地区における100%出資の在庫・加工機能分社「エムエム建材販売」を春に立ち上げ、阪和興業の新たな鋼材加工・販売拠点「北関東スチールセンター」も夏から稼働した。

A これら大資本の事業展開が当該市場にどう影響を及ぼすか。地場の既存流通業とは協業、競合…さまざまなケースが考えられるだけに目が離せない。

B はっきり言えるのは、市場で競争優位性を発揮するのは規模や資本の大小じゃない。構造的な買い手市場では顧客の「必要な存在」としてどこよりも早く、きめ細かくニーズを満たし、加工・物流機能としてサプライチェーンに組み込まれれば重宝される。

C 規模が小さいならそれを生かした柔軟さと小回りを利かせた機動力が強みになる。

B 要は優勝劣敗だ。世の中の変化を踏まえて常に改良・開発を施し、カスタマイズを重ねたところに商機(勝機)や活路が見出せるってことだ。

C なにかひとつでも秀でた情報力、行動(考働)力を武器に「人の力」「加工機能」「物流体制」を備えた独自の現場力を生かし、成果につなげることだね。

B 鋼材流通業の設備投資の話題には事欠かなかった。自動化・省人化、環境配慮、高速・高精度の観点で薄板・厚中板加工業界におけるファイバーレーザの導入続出は象徴的。また、顧客の要望に応じて下工程まで採り込んだ複合一貫・川下展開の動きも目立った。

A 「客先ニーズに合わせた事業領域拡充」とは聞こえがいいが、それが正当な形で収益に反映されなければ単に「手間を押し売りされた」に過ぎない。〝無償サービス〟は、ひいては業界秩序を乱し、品位を落とすことになりかねない。

B 「労にかなった対価」の確保が絶対条件だ。厚板シヤリング工業組合が以前から推し進め、今では関係当局も推奨する「取引適正化」の動きが金属産業界全体に波及し、より実効性ある取り組みに発展することを強く願う。

D ところで好況到来にもかかわらず、浦安や川口など首都圏近郊で老舗の廃業・事業撤退が散見されたが…。

A 「好況到来」だからだよ。種々の理由で「いずれは…」と考えていた経営者にとって商権譲渡、設備売却、従業員再就職、資産運用などの面でまさに「好機」と言える。その機能価値を高く評価し「ほしい」ところが現れるチャンスでもあるんだから。

B 以前から〝景気の潮目の変わり目〟にこうした事象がよく出る。ひとつ言えるのは、さまざまな状況を想定し「会社事業の魅力と価値を高めておく」ことが大切だってことだね。(おわり)