⑩完 出島表門橋架橋 130年ぶり歩いて渡る

 11月24日、長崎市江戸町の中島川沿いには約800人が集まり、“歴史的な瞬間”を待ち望んでいた。田上富久市長を先頭に、秋篠宮ご夫妻とオランダ王室のローレンティン妃らが続き、レッドカーペットが敷かれた鉄製の橋の上をゆっくりと歩いて行く。約130年ぶりに江戸町から出島へ架けられた「表門橋」が通行に使われた。

 日本の鎖国時代、ヨーロッパとの貿易の窓口だった出島。当時の表門橋は出入りする国内外の人でさまざまな言語が飛び交っていたとみられる。今回よみがえった表門橋も、国史跡の「出島和蘭商館跡」を訪れる国内外の観光客でにぎわい、門番姿の日本人スタッフと一緒に記念撮影する外国人の姿もある。

 表門橋は1888年、長崎港内の土砂堆積を改善するため出島内側を約15~20メートルの幅で削った際に撤去された。その復元は市の悲願だったが、江戸時代より川幅が広くなり、完全な再現はできなかった。元の長さは4・5メートルだったが、今回架けられたのは38・5メートル。ただ対岸の発掘調査で当時の位置を特定し、同じ場所に架橋することはできた。通常は両岸で橋を支えるが、国史跡の出島側の負担を抑えようと、江戸町側に支点を置いた。

 門番姿で橋を見守る出島のスタッフ、橋本和典さん(37)は「入場料を支払って史跡の中に入らなくても、橋を渡りにだけ来る人も少なくない。何度も来ている人もいるようで、出島への親しみが以前より増している」と話す。22日に訪れた大村市在住の女性(58)も「新しい橋が架かったと聞き、近くで用事があったついでに渡りに来た」と話した。ただ橋本さんによると、渡り終えてから新しい橋と気付く観光客もいるようで、「本格的に広まるのはこれからだろう」と言う。

 市出島復元整備室によると、昨年10月に新たな復元建物6棟が完成した影響もあり、昨年12月の入場者は3万3433人と過去最高を記録したが、今年12月は25日午後3時現在で既に3万4518人と記録を更新。8~10日に同史跡の建物に映像をうつすプロジェクションマッピングがあり、その入場者4968人を差し引くと2万9550人だが、それでも昨年の25日までより約4千人多いという。

 馬見塚(まみつか)純治室長は「入場者増は橋の効果だろう」と話す。さらに「今後口コミなどで評判が広まると思うが、温かくなる来春に向けさらにPRしたい」と意気込む。

 市は1996年に出島復元整備計画を策定。これまでに1~3期事業を終え、今後は出島を警備する役人が使っていた「番所」など3棟を復元する第4期事業の準備に入る。馬見塚室長は「長期的な目標の、島だったころの出島の再現を見据えつつ整備を進めたい」と話している。

出島表門橋の完成記念式典で渡り初めをされる秋篠宮ご夫妻とローレンティン妃ら=長崎市、出島表門橋

© 株式会社長崎新聞社