金属行人(12月27日付)

 今年の鉄スクラップ市況を振り返ると、やはり中国の影響を実感させられた印象が強い。6月末の「地条鋼」全廃がその象徴。中国で行き場を失う鉄スクラップの動向に戦々恐々としたかと思えば、その後は中国の環境規制と内需拡大でビレット価格が高騰。日本の電炉もビレット輸出に積極対応し、市況は国内主導で上昇した▼師走に入っても再び中国発の話題で市中は一時的に騒然となった。発端は今月15日、中国政府が来年の輸出関税率を発表したこと。発表自体は毎年恒例だが、一部報道で現在40%の中国の鉄スクラップ輸出税がゼロになると伝えられ、「すわ暴落か」と大騒ぎに。ただ実際は2018年も税率40%が維持されるのが正しいという▼報じられたのが土曜日の朝刊だったため、ある電炉メーカーでは「土曜だけ入荷が良くなった」と聞いた。報道内容を信じ、少しでも在庫を減らそうとしたヤード業者の気持ちも理解できる。中国の動きが市況に与える影響を改めて実感させられる出来事となった▼今年も残りわずかだが、想定外の出来事が起こる可能性は常にある。特に市況が大きく上昇した後は下げがきつくなるのもよくあること。せめて年末年始はのんびり過ごしたいものだが、アンテナだけは高く伸ばしておく必要があろう。

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