米原潜 佐世保入港が最多 北の監視強化関連か 今年25回 事故など備え訓練も重要に

 米海軍の原子力潜水艦「コロンビア」(6080トン、D・エドガートン艦長ら138人乗り組み)が27日、長崎県佐世保港に一時寄港した。米原潜の佐世保入港は今年25回となり、過去最多だった昨年(24回)を更新した。専門家は、原潜入港と北朝鮮の相次ぐミサイル発射との関連を指摘する。

 1964年の初入港以来、通算413回目。外務省から市に入った連絡によると、目的は「補給・維持」。同日午後1時5分に港中央付近に入港し、約35分とどまった後、出港した。原子力規制庁による放射能測定結果は入港前と「同一レベル」だった。

 国際安全保障が専門の静岡県立大グローバル地域センター特任助教、西恭之氏は「一部は、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えて入港した可能性がある」と分析。弾道ミサイル発射の観測には、電子偵察機RC135S(通称コブラボール)や、ミサイル追跡艦「ハワード・O・ローレンツェン」が当たる。しかし西氏は「数は限られており、ミサイル関連の通信傍受に原潜を使う場合もある」と指摘する。

 西氏によると、北朝鮮の弾道ミサイル発射は2016年に最多の24回を数え、今年も20回に上る。これと符合するように佐世保への原潜入港は16年、今年と最多を更新した。今年は5月23日と26日に入港後、29日に弾道ミサイル1発が発射された。7月や11月にも、入港後にミサイル発射の動きがあった。

 今月26日には韓国紙の中央日報が「北朝鮮が近く人工衛星を発射する計画」と報じた。西氏は「韓国軍が集中監視しているとされ、コロンビアも監視に加わっているかもしれない」と推測。その上で「ミサイル試射が増えて射程が延び、成功率が上がれば、原潜を含め、監視する艦船が佐世保に入港する回数は増えるはず」としている。

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 原潜入港の増加に伴い、事故など「万が一」への備えも重要となる。市は02年から毎年、入港した原子力艦から放射能が漏れたことを想定に訓練。今年も31機関約650人が参加し、初期対応や避難方法を確認した。ただ米軍が参加したことはない。

 佐世保市赤崎町のケアハウス「あかりさき」は毎年訓練に参加している。高齢者50人が入所し、車いすの人も多い。避難経路などを確認しているが、藤井陽子施設長は「形式的な訓練になっているようだ」と明かす。赤崎貯油所に原潜が入港する際、艦体が目視で確認できるほど施設は近い。藤井施設長は「事故が起きた際の備えは必要。住民がいち早く異変を察知できる設備があれば、ありがたい」と語った。

佐世保に一時寄港した米原潜コロンビア。米原潜の入港は今年25回目で、年間最多となった=佐世保港

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