なぜ巨人は二塁手を固定できないのか 名手・篠塚氏が見る現状

インタビューに応じる篠塚和典氏【写真:編集部】

名二塁手・篠塚氏が見る巨人の“セカンド事情”

 巨人は今季、72勝68敗3分の成績で4位に沈み、球団史上初めてクライマックスシリーズ(CS)進出を逃した。優勝した広島からは実に16.5ゲーム差を話される、失意のシーズンだった。

 開幕前に1つのポイントになると見られていたのが、正二塁手争いだった。レギュラーが確定しない中、若手の台頭に期待が集まったが、どの選手も結果を残せず。結局、開幕当初は代打起用が中心だった村田修一をスタメンに戻し、ケーシー・マギーを三塁から二塁に回すという形で後半戦を乗り切った。打線は破壊力を増したものの、守備力も考えれば、マギーは本来なら三塁で起用したいところ。村田がいなくなる来季は岡本和真の台頭も期待されるが、マギーを三塁に戻す形が自然とも言える。その場合、再び二塁が空くことになる。

 巨人の二塁手として、真っ先に思い浮かぶ選手は誰か。おそらく、ほとんどの人が篠塚和典氏の名前をあげるのではないだろうか。天才的な打撃と華麗な守備で長らく巨人を支えた名選手は、2度の首位打者、通算1696安打、通算打率.304、4度のゴールデングラブ賞、5度のベストナインという輝かしい実績を残した。その後、仁志敏久氏もレギュラーとして活躍したが、巨人はそれ以降、このポジションを埋められていない。打てる二塁手がいかに貴重な存在でるかが分かる。

 篠塚氏は二塁のレギュラーが出てこない巨人の現状をどう見ているのか。まずは「チームコンセプトとしてどうするか」が大事だと指摘する。「打って守れる選手を置くのか、ただ守れる選手を置くのか。バッティングはそこそこ、普通でもいいのか」。守備が計算できる選手であれば、打撃はある程度目を瞑ってもいいが、それでも限度があるという。

「ただ、今年みたいにバッティングが悪いと、すぐ代えたくなる気持ちも分かります。打率2割6、7分くらいは打たないと。それで、守備がしっかりしていれば、そうは代えないはずです。守備はいいけど、やっぱりバッティングが2割1、2分では、監督としても代えたくなってしまう。大事なところで打てないと」

 この最低限のラインを保ってくれれば、道筋が見えてくる。そして、首脳陣にも“我慢”が必要だと、篠塚氏は言う。

二塁手固定に必要なこととは…

「実際に(春季)キャンプからセカンドをやらせるんだ、ということ(意識)が必要です。今年のキャンプを見ていると(セカンドの候補が)4人も5人もいた。1人でいいんです。今年はこの選手をセカンドで使うんだ、と。そうすると、それなりのことを教えていかないといけない。4人も5人もいたら、誰が行くんだ、誰が出るんだ、となりますからね。その中で成績の良いものが(レギュラーで)いくといったって、そんなにみんな成績が出るわけじゃない。突発的に誰かポンと成績を伸ばす選手が出てくればいいですけど、そういうわけにもいかないでしょうから」

 レギュラー候補を1人指名し、ある程度は我慢して使い続ける。競争もいいが、責任感と精神的な余裕を与えるのも1つの手だ。篠塚氏は、今季の二塁マギーという起用法については、理解を示す。ただ、「(セカンドが)いなかったからしょうがない。でも、打つ方がしっかりしていたから、守備はそこそこ守れればいいという感覚でやっていたと思います。村田もいて、サードを守れる人材がいたからできた采配です」とも。やはり、しっかりとレギュラーを張れる日本人選手が台頭してくれるに越したことはない。

「なかなかそういう選手がいない。吉川尚がいますが、左打ちで安定して左投手を打てるかどうか、というのがあります。ただ、足もあるし、守備は良さそうですけどね。あとは、サードをどうするのか。村田がいなくなって、岡本にするのか。マギーをサードにすると、セカンドを誰にするのか、となる。でも、これではね……。シーズンを通しても、『今日は誰がセカンドやるんだろう?』では、やっぱり不安ですよね」

 センターラインは重要なだけに、やはり固定できるのが理想。そのためには、若手の成長を待つという方法も、間違いなく1つの手だ。大学時代はショートが本職だった吉川尚を本格的にセカンドで使うのであれば、ある程度の時間を与え、首脳陣も我慢してみるということが必要になるかもしれない。昨年のドラフト会議で1位指名した有望株なだけに、素質は確かなはずだ。

 レギュラーを任せられる二塁手が台頭するのか。巻き返しを狙う巨人にとって、来季も大きな課題となりそうだ。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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