日鉄住金建材、「津波避難タワー」海外で初採用 インドネシアで竣工、避難訓練なども実施

 日鉄住金建材(社長・中川智章氏)は27日、インドネシア・スマトラ島アチェ州の州都バンダ・アチェ市で津波避難タワー「SGタワー」を竣工したと発表した。同市における地震・津波総合防災計画の有効性を検証するプロジェクトの一環で海外で本製品が採用されるのは初。今月21日には現地で同市主催の開所式と記念式典が開催され、中川社長のほか在インドネシア日本国大使館の安藤重美経済部参事官、アミヌラ・ウスマン市長らが出席した。民間企業によるこうした社会貢献活動は珍しく、両国をつなぐ架け橋となりそうだ。

 同社は東日本大震災の大津波で仙台製造所が被災。以後、津波避難タワーを製造所内に設置しており多くの見学者が訪れている。一方、アチェ市はスマトラ島最北西端の地震多発地帯に位置しており、2004年12月に発生したスマトラ大地震の震源地からも近く、直後の津波により約7万~8万人もの市民が犠牲となった。こうした背景から同市の防災意識は高く、日本で行われたインドネシア向けの仙台製造所の津波避難タワーの見学会を契機にアチェ市との交流が始まった。

 アチェ市はスマトラ大地震を契機に防災プランを整備していたが、地元住民らがマニュアル通りに行動しないことに悩んでいた。そこで同社とアチェ市および地元の国立大学であるシアクアラ大学の3者は15年に地震・津波総合防災計画の有効性を検証するべくMOU(覚書)を締結しプロジェクトを実行。このプロジェクトに同社が出資し、一環として津波避難タワーの建設を行うとともに東日本大震災の被災経験を生かした地元住民の避難訓練も数回実施した。

 タワーは同市やシアクアラ大学、現地ファブリケーターのシガディンハビームセンターなどの協力で建設。コラム―H形鋼構造の鉄骨3階建て(+屋上階)で鉄骨重量は20~30トン程度。角形鋼管(UBCR365、300ミリ×300ミリ、板厚12ミリ)は同社が供給し、それ以外の部材は現地で調達された。高さは14・2メートルで、収容人員は約500人を想定。地元防災局・消防局の敷地内にあり、普段は1階を消防車の駐車場として、2階以上を倉庫や会議室として活用することで有事に避難しやすい建物にする。

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