三菱伸銅の品質不正、「意識不足・シェア優先」が原因 品質管理部設置など再発防止策

 三菱マテリアルが28日に公表した子会社の品質不正に関する中間調査報告書によると、三菱伸銅では「需要家別検査ポイント表」と呼ばれる社内文書を参照するなどして日常的に検査データを改ざんしていたことが明らかとなった。仕様書遵守の意識不足やシェア拡大の優先など5項目を原因に挙げた。再発防止策には品質管理部の設置や検査を強化するシステムの導入を盛り込んだ。三菱電線工業では「シルバーリスト」と呼ばれる文書で改ざんの許容値を示していたとした。

 三菱伸銅が原因とした仕様書遵守の意識不足では顧客と合意した仕様書に基づく規格を自己判断で変更することに抵抗がなくなっていたと分析。これまでの経験等をもって正当化していたとした。

 シェア拡大の優先については、1990年代に後発で車載コネクタ材を製造し始め、受注拡大を目指し顧客の要求に無理に応えようとした可能性について言及。無理に受注したことが改ざんにつながった可能性があると分析している。また改ざんが過去から行われていたことやクレームがなかったことから安易に不正を継続したと説明したほか、検査不適合による損失の回避や監査手続きの形骸化も原因として列挙した。

 再発防止策には本社での品質管理部の設置や親会社との人材交流などによる品質管理体制の強化や、工程能力と品質面を含めた指標策定などの仕組みづくりを盛り込んだ。加えて製作所では品質の管理と保証の体制・役割の明確化や検査プロセスの高度化に向けたシステム導入についても触れた。三菱伸銅の堀和雅社長は「防止策をやり切れば2度と不正は起こらないと確信している」とした。

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