開城工業団地「不正な閉鎖」に進出の韓国企業は怒り心頭

韓国統一省の政策革新委員会(以下革新委)が、朴槿恵政権が2016年2月に北朝鮮の開城工業団地の閉鎖を決定したのは、正当な手続きによるものではなく大統領の独断だったとの調査結果を発表したことはデイリーNKジャパンでも既報の通りだ。

国務会議(内閣)で決定し、大統領の指示内容は文書で残すことが憲法で定められているが、それらも無視して決定が行われた。革新委は「確認できなかった」としたが、朴槿恵前大統領は、崔順実のお告げに基いて北朝鮮に対抗していたことを示唆する調査結果だ。

調査結果に怒りを露わにしているのは、開城工業団地に進出していた韓国企業関係者だ。急な撤収指示で設備や完成品のほとんどを置いたままの撤収を余儀なくされ、大損したからだ。設備は、北朝鮮当局に押収されてしまった。

開城に進出していた123社のうち、今でも業務を継続出来ているのは49社に過ぎない。開城工業団地企業協議会と統一省が算定した被害額は7779億ウォンにのぼる。シン・ハニョン会長は政府に対し、公式謝罪と責任の追及、工業団地の再稼働を求めた。

また、韓国CBSラジオに出演したホンジンファッションのチョン・ジョンタクさんは、常識の異なる北朝鮮の人々と対話を重ね、苦労して築き上げた事業がおかしな政権のせいで一瞬のうちに崩れ去ったとして、怒りを露わにした。

チョンさんは、撤収命令が出される5日前の昨年2月5日、洪容杓統一相(当時)に工業団地は大丈夫かと尋ねたところ、撤収や操業中断は全く考慮していないので安心せよとの回答があったため、その翌日に大量の原材料を工場に送ってしまい損失を拡大させたという。

また、マンソン社のソン・ヒョンサン社長はJTBCの番組に出演し、撤収の前兆も事前情報もまったくなく、完成品と資材、設備のほとんどを置き去りにせざるを得なかった。甚大な損害のため企業活動はほぼ停止し、12件もの訴訟を抱えているとソン社長は嘆いた。

一方、保守系メディアは、そもそもの責任は北朝鮮にあることを無視しているとして、委員会の調査結果を批判している。

朝鮮日報は、「世界は北朝鮮を圧迫しているのに、統一省は逆に向かっている」「北朝鮮による哨戒艦撃沈事件や核やミサイルには何も言わず、過去の保守政権叩きばかりしている」「金大中・盧武鉉政権の太陽政策にUターンしようというのか」などと、今回の調査結果を厳しく批判した。さらに社説では「委員会の本音は想像がつく。彼らは開城工業団地と、対北朝鮮制裁そのものが気に入らないのだ」と述べている。

一方、米国務省の米国務省のケービー報道官(東アジア太平洋担当)は、閉鎖は北朝鮮の脅威と国連決議違反が背景にあり、すべての国は北朝鮮を経済的に孤立させる措置を取るべきだとして、閉鎖措置を支持したと米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。

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