【MLB】殿堂投票の曖昧な基準に一石 松井秀喜氏の日米通算成績を米メディア考察

現役時代ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏【写真:Getty Images】

メジャーで10年、日本で10年、両国で所属チームに貢献も…

 ヤンキースで2009年ワールドシリーズMVPに輝いた松井秀喜氏は、メジャー現役最後の試合から5年の月日が経過し、米国野球殿堂入りの資格を初めて手にした。2014年度殿堂入り投票の対象となった野茂英雄氏に続き、日本人選手では2人目の快挙となったが、松井氏が日本で残した成績も考慮すべきか、米メディアの間では議論が巻き起こっている。その中で、メジャー移籍の年齢が遅かった選手に関しては、考慮する余地もあるのではないかという見解を示しているのが、米スポーツ専門局「CBSスポーツ」電子版だ。

 日米球界でそれぞれ10年ずつのキャリアを送った松井氏は、巨人では通算打率.304、1390安打、332本塁打、889打点という圧巻のパワーを見せつけ、MLBでは打率.282、1253安打、175本塁打、760打点の成績を残した。日米通算での受賞歴は目を見張るものがある。オールスター選出は11度(9度は日本)、MVP3度(すべて日本)、日本シリーズMVP、ワールドシリーズMVP、日本シリーズ優勝3回、ワールドシリーズ優勝1回と輝かしいタイトルを誇り、「ゴジラと呼ばれた男は凄まじいキャリアを送った」と絶賛されている。

 そんなスラッガーだが、同時にMLBの成績だけでは殿堂入りには「遠く及ばない」と厳しく指摘されている。記事では「彼のMLBのキャリアはケビン・ミラーと互角だ」と、2003年に中日移籍問題で物議を醸したミラー元内野手を比較対象に選出。ミラー氏はメジャー12年間で打率.274、170本塁打の成績だったが、殿堂入りの可能性すら論議されたことはない。

 だが、日本での成績を合算すると、松井氏は殿堂入り濃厚な大砲に比肩するほどの成績になるという。その人物とは、元レッドソックスのデービッド・オルティス氏だ。“ビッグパピ”の愛称で親しまれるオルティスしは、メジャー通算10091打席で、打率.286、出塁率.380、長打率.552、541本塁打を記録。松井氏の日米通算成績は、10570打席で打率.293、出塁率.387、長打率.523、507本塁打となる。

殿堂投票は米国内の成績に限るべき? それとも…

 日米の成績を合算した場合、松井氏にも殿堂入りの可能性が生まれそうだが、2016年にイチロー外野手がピート・ローズ氏超えを果たした時と同様、日米の野球レベルには差があるという考え方が主流なため、合算することは大きな物議を醸すだろう。

 記事では「殿堂は最高レベルで残した成績を検討材料とすべき」「米国野球殿堂なのだから、米国内での成績を考慮すべき」「今後は日本球界を経てメジャー移籍する選手も増えるので再討議すべき」「日米のレベルの差は歴然としているため合算は疑問」など、数々の論点を紹介。それと同時に、殿堂投票の基準には「選手の記録、能力、品格、スポーツマンシップ、性格、チームへの貢献度に基づく投票が行われること」と記されており、活躍の場は米国内に限るのか否かは漠然としていることも指摘。松井氏の日本での活躍を考慮すべきかは「投票者個人の裁量に任されている」としている。

 将来的に殿堂入り確実と言われるイチローは日本で9年プレーした後、メジャーで17年を過ごした。日本ハムで7年プレーした後にメジャー移籍を果たしたダルビッシュ有投手も、メジャーですでに6年を終えている。今オフに海を渡ることとなった大谷翔平投手はNPBで5年を過ごしたのみで、メジャーでのプレー年数がキャリアの大半を占めることは間違いないだろう。一方で松井氏や、ドジャースとヤンキースで活躍した元広島の黒田博樹氏のように、メジャーでのプレー期間は短いものの、日米両球界で素晴らしいキャリアを送った選手もおり、「いつの日か、日本での成績も考慮しようと検討される日も来るのでは」と分析している。

 野茂氏は殿堂入り候補となった1年目に6票(有効投票の1.1%)を得たが、得票率の5%に達せずに、翌年から候補を外れた。今回の松井氏は5%を得てリストに残るのだろうか。投票者の見解に注目が集まる。

(Full-Count編集部)

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