『しいたけ占い 12星座の蜜と毒』しいたけ著 書き手と読み手で編む1冊

 しいたけ本の書評を書こうと思います、とSNSでつぶやいた時の反響ったらなかった。普段70とか80あたりを推移している「いいね」が、積もり積もって201「いいね」。「私も好きです」「楽しみです」とのコメントがまあ絶えないこと。「私あの人嫌い」「なんかぴんと来ない」的なコメントは一切寄せられない。掛け値なしで「みんな大好き、しいたけ占い」なのである。

 彼にとって2冊めとなる本書は、現時点での「しいたけ占い」の集大成と言っていい。「あなたはこんな人です」「全体運」「恋愛」「仕事」「悩み」「SNS」「開運ワード」「しいたけからのメッセージ」と、あの手この手で読み手の人間性を紐解いていく。

 興味深いのは、長所と短所、光と闇を象徴する「蜜と毒」という切り口だ。「あなたにはこんな素敵なところがありますよ」と「あなたにはこんな闇がありますね」を同じ見開きに並べてある。ちなみに獅子座の「毒」のページにはこうある。「結果を出し続けなければ私は誰にも必要とされないんだ……と自ら他人との間に『壁』を築いて孤高を背負いすぎる」と。

 返す言葉が、まるでない。

 ためしに、「しいたけ占い」にまるで詳しくない友人(男子)と読んでみた。友に該当する星座の項を読み上げると、彼はこう言った。

「うん。そうありたい、ってすごく思うね」

 そうなのだ。ここにあるのは、すでにあることの羅列ではない。「あなたには、こういう在り方が合っている」あるいは「こんなふうに歩くと輝きを増す」という、今より半歩先を示してくれるのだ。しかも、読む者の生理にまるで無理のない半歩。無責任に理想を語るのではなく、こちらの心に静かに寄り添ってくれている言葉の連なり。うん、それならできるかも。私、しいたけさんとなら、幸せになれる気がする!……この本を手にした女子たちはそんなふうにして、この1冊を持ち歩くことになるだろう。

 巻末には、いくつかのエッセイが載せられている。人に嫌われたときの、心の置き所について。気が重い月曜日を、ゆかいに乗り切る方法について。

 つまりこれは、人生についての本なのである。「星座」という区分けがされているけれど、でもどのページをめくっても、しいたけさんは、読み手に向かって丹念に「あなたの幸せ」を説く。他に変わりなんかきかない、どこの誰とも違う、あなただけの幸せを説く。おそらく「しいたけ占い」の完成形は、彼のWeb占いや書籍たちではない。これを受け取った読み手が新しい一歩を踏み出す、その瞬間、この1冊は成就する。書き手と読み手が手を携えて、幸せを編むための一冊なのである。

(KADOKAWA 1300円+税)=小川志津子

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