信越地区、道路インフラで切り開く未来

 信越地区では中・長期で道路インフラの整備が進行中だ。災害時の代替性確保や県土の強靭化、救命・救急医療体制の向上、観光ネットワークの構築に資する事業。周辺に立地する企業は高速道へのアクセス向上などで活性化が期待できる。橋梁など鋼材需要に資する主要工事の進ちょく、計画を紹介する。(杉原 英文)

地域高規格道路「松本糸魚川連絡道」

長野側、事業化目指す/一部区間は橋梁に

 地域高規格道路松本糸魚川連絡道路(長野県内約80キロメートル、新潟県内約20キロメートル)について全線の開通時期は未定であるものの、整備効果は沿線の観光、産業の活性化や防災、災害時の輸送路の確保が期待される。

 長野県内では15年度に安曇野北IC(仮称)~大町市街地南の計画案(11年度発表を修正)が発表されている。地区説明会や意見交換会などを行い、事業化を目指している。

 大町市街地の高速道へのアクセスが30分圏内に入り、安曇野市内の島新田工業団地、青木花見産業団地、明科工業団地が高速道10分圏内に入り県内、他地域との連携強化につながる。

 計画案では犀川、高瀬川を跨ぐ区間は橋梁となる。県道、市道に接続する立体交差部分では構造物の可能性がある。一部は現道活用となる案だが、新設部分ではガードケーブル、ガードパイプ設置の可能性がある。

 小谷地区では国道148号小谷村雨中・月岡バイパスが改築事業で着手。山間部を抜ける橋梁(135メートル)、トンネル2本(339メートル、750メートル)を通す。橋梁のピアが契約となり、今後施工が進む予定。橋梁形式はPCの箱桁が予定される。

 白馬、小谷地区は降雪量が多く冬季の通行確保に苦労が多かった。山間部の狭隘地で14年11月の地震では白馬村で通行止めが発生し、う回路の確保が課題となったことから法面対策、落雪、落石防止柵等のニーズがある。

新潟側も一部ルート帯決定

 新潟県は17年11月末に松本糸魚川連絡道路(新潟側)のルート帯決定を発表した。区間は(1)北陸自動車道糸魚川インターチェンジ~山本橋(2)山本橋~小滝までの2区間約11キロメートル。事業効果を早期に発現できる点や事業費の観点から決定した。

 残りの小滝~平岩区間6キロメートルは5キロメートルのトンネルで抜けるA案、3本のトンネルと2本の橋梁で渡るB案があり、検討を継続。平岩~長野県境までの3キロメートルは国道148号を利用する。

 新潟県土木部道路建設課は「ようやく具体化に向けたスタートを切った。地域住民から早期建設を切望する声が強く、スピード感を持って取り組みたい」とコメント。現在は工事エリアの環境調査を継続中。

 糸魚川市は16年12月の大火から1年が経過し復興計画が進み始めた。10年、20年先を見据えた中・長期的復興にも資するものと期待されており、県土木部道路建設課ではインフラ整備で後押しできればと考える。

上越三和道路、建設ピークへ

軟弱地盤対策で杭打ち、一部鋼橋も

 上越市と魚沼地域を結ぶ地域高規格道路「上越魚沼地域振興快速道路(延長60キロメートル)」では一部区間で事業化が進む。権限代行で北陸地方整備局高田河川国道事務所は上越市寺~上越市三和区本郷間(7キロメートル)の整備に着手。現在は18年度に上新バイパス寺IC~鶴町IC間(3キロメートル)の暫定2車線開通に向けて事業を推進中だ。

 《事業効果》

 上越魚沼地域振興快速道路の整備で上越~十日町~南魚沼間の通行時間が現在の1時間45分から45分に大幅に短縮される。

 一帯は関川とその支川の保倉川などの河川氾濫原地帯で地表から深さ60メートル程度にわたり軟弱地盤が分布。鉄筋を使用するPC橋が多く、3キロ区間に7本のPC橋、41メートルの鋼橋が1本発注された。鉄筋コンクリートの構造物ボックスカルバートは15箇所。寺ICの付近には新潟県立武道館(仮称)が19年中の竣工をめどに計画されている。

 《軟弱地盤対策》

 橋と橋の間は7~8メートルの高盛土構造を採用。橋台部は軟弱地盤で支持層に到達するよう深さ60メートル程度の場所打ち杭が採用され、杭の構造体となる鉄筋かごで鉄需が発生。

 工事は計画通り進ちょく。橋梁の下部工事は1橋を残し完了。盛土の下には周辺の田畑の隆起や沈下を防止するため、深さ17~20メートルの柱状の改良体を打設。

 長い杭は倒れ込む力学が働くため、橋台の背面には軽量盛土を使用。載荷重を軽減し、軟弱地盤の変位による橋台や杭の側方移動を防いだ。掘削、床付の後、壁面に基礎コンクリートを打設。壁面支柱、壁面材を設置した後は発泡スチロールブロックを加工し、金結金具で設置。最後にコンクリート床板を打設する工法だ。上部工事は1橋が完成済みで契約済みが6橋、未発注が1橋。17年度に橋梁製作、18年度架設を予定している。

 《情報化施工》

 現地では測量から納品まで建設生産のプロセスでICT(情報通信技術)を活用。ドローンなどによる空中写真測量を行った。3次元データによる設計・施工計画を組み、ICT建設機械を用いた。

 《担い手確保へモデル工事》

 担い手確保の一環で上沼道下野田地区改良その2工事で週休2日制を導入。地元高校生向けに現場見学会が催され鉄筋加工、クレーン操縦などを体験した。沿道両側にガードケーブルが、ランプ部などには一部ガードレールが計画される。上沼道全線では自動車専用道路となるため立ち入り防止柵を設置する予定。

 《今後の予定》

 残り4キロメートル区間は詳細設計中。詳細設計が完了したものは3橋のみ。まずは地盤改良の着手からとなる。

新潟中央環状道路、整備着々

新潟市/来年度以降、鋼橋2橋発注予定

 新潟市は同市北区の東港と西蒲区の角田山を結ぶ大動脈「新潟中央環状道路」45キロメートル(構想区間含む)の整備を進めている。都心アクセスの代替性確保や地震・津波などの災害時に幹線道路へのアクセスを補完する強靭化および新たな物流軸の構築、救命救急医療体制の強化などの観点から効果が期待される。

 同道路は橋梁や道路構造物など鋼材需要に資するプロジェクトとして鉄鋼関連からも注目されており、現時点では2020年代半ばの概成を目指している。一部区間では供用が開始されており、17年12月時点の整備率は約50%。17年度中には横越バイパスの一部区間約1キロメートルが、4車線で開通する。

 16年度には中ノ口工区の内700メートルが整備され、将来的には国道8号と北陸自動車道の黒埼PAスマートインターチェンジが接続する。周辺には暖房機器、金属加工関連が立地する白根北部工業団地、航空機産業(新潟市が推進する産学官連携NIIGATA SKY PROJECTなど)が集積する同第2工業団地があり、インターチェンジにおいて大型車の乗り入れが可能になればアクセス性の向上により成長産業を支援することが可能になり、新たな物流ルートとしても期待される。

 18年度以降には橋梁建設が予定されている。江南区と南区を結ぶ信濃川渡河工区には9径間連続非合成細幅箱桁橋(鋼橋)が計画されており、橋長は580・5メートル、重量は未定。幅員は2車線の暫定整備となる。

 西区の黒埼工区では北陸自動車道を跨ぐ形で鋼少数鈑桁+鋼細幅箱桁橋(鋼橋)が予定されている。橋長は高速道に架かるオーバー部前後を含む全長245メートル。総重量は536トンの予定。高速道路を通行する運転者の圧迫感を軽減するよう道路に架かる部分のみ箱桁を使用する構造で、北陸地域では初の採用(予定)。橋梁の取り付け部の盛土部は地盤改良工事を17年度から始めている。また、現在江南区の二本木工区ではJR信越線を跨ぐPC橋が設計中だ。

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