北海道地区鉄鋼市場 回顧と展望 17年=非住宅建築牽引、需要100万トン台へ、18年=新規建築案件始動

 17年の北海道地区鉄鋼市場は、前年に続いて高稼働を続けるファブリケーターに象徴されるように好調な非住宅建築にけん引された。また、長く低迷を続けていた土木部門も一昨年夏に発生した台風被害の復旧を含めて需要は回復傾向を示した。その中で特徴的だったのは、この数年深刻化している業界全体を覆う人手不足や各種コストアップに伴う予定案件の着工遅れ、需要家の生産能力に絡む問題などだ。その結果、件数で恵まれた土木部門でも入札の不調・不落が続き、年度内の完工が難しい案件も相当数発生。住宅関連では昨年並みの着工戸数を維持しているが、一戸当たりの屋根面積減少や使用素材の多様化なども際立った。一方、普通鋼鋼材需要(受注)は4年振りに100万トン台を割った15年度(94万1220トン)から16年度(106万3798トン)は100万トン台へ回復し、17年度も好調な非住宅建築に支えられて横ばいないし微増が見込まれる。ただ、高稼働のファブリケーターに代表されるようにS造の増加で形鋼需要は増えているが、RC造の減少から異形棒鋼の需要は再び30万トン割れを懸念する声も多い。また、この傾向は人手不足の継続などに伴い、18年度以降も続く可能性が高いようだ。

17年の概況

 新設住宅着工戸数は、1~10月累計で前年同期比1・8%増の3万1385戸と、10カ月間で3万戸台に乗せた。これにより暦年ベースで見ると11年(3万2327戸)から7年連続継続中の3万戸台が確定し、16年(3万6953戸)に迫る状況。

 建築着工床面積は、1~10月累計で同3・5%増の473万1513平方メートル。構造別に見ると、RC造(113万6624平方メートル、前年同期比4%減)は減少しているが、木造(207万7079平方メートル、同1・2%増)、SRC造(6万7866平方メートル、同68・7%増)、S造(143万2347平方メートル、同11・1%増)は増加しており、鉄骨需要増を裏付ける結果となった。

 公共工事は、保証請負金額の4~11月累計が同5・5%増の7784億8千万円。地区別では、道南(同21%増)、道央(同7・2%増)、道東(同14・4%増)は増加しており、道北(同1・1%減)と道外(同26・8%減)は減少。工種別では土木(同9・3%増)、建築(同2・8%増)ともに増えており、中でも目的別で治山・治水は同47・5%増と高い伸びを示している。

 需要家の動向を見ると、北海道機械工業会鉄骨部会まとめの鉄骨共同積算量は、1~11月累計が同25%増の16万8775トン。これは平年比で見ても33%増と伸びており、直近のピーク期となる07年(17万4100トン)や08年(17万3300トン)に迫る水準だ。

 17年は創世1・1・1区や石狩湾新港地域のLNG基地・火力発電所、帯広厚生病院など16年から継続の大型案件に加え、北海道がんセンター、中央体育館、インバウンド効果でホテルやリゾートの新築や増築、TPPや畜産クラスター事業関連で大型の畜産・農業・漁業施設などが需要を押し上げ、加えて他地区からも相当量の鉄骨案件が流入。その結果、ファブリケーターの山積みは年間を通して高く推移し、製作工程や受注調整に追われるケースも目立った。その反面、「16年に比べて物件数が減少し、空中戦が減った」との声や、ファブリケーターの生産能力に絡んで道内では請け切れず、東北を始めとした他地区へ鉄骨案件が流出したケースも複数発生した。

 一方道内溶融亜鉛めっき加工7社の加工量は4~11月累計が同16・2%増の3万4431トン。14年度でピークアウトした太陽光発電の架台加工減少などから16年度までは3年連続の減少傾向を辿ったが、今年度はS造建築の増加に伴い再び増加の流れが生まれている。

 これらによって、日本鉄鋼連盟がまとめた北海道地区の普通鋼鋼材受注量は、4~10月累計は同2・5%減の65万330トンと微減だが、1~10月累計では同1・4%増の89万2168トンと微増している。品種別ではS増建築の増加で形鋼は増加しているが、異形棒鋼は期待に反して伸び悩んでいる。また、人手や車両の不足、ファブリケーターの生産能力の問題に加え図面遅れなどが流通の鋼材出荷に影響を及ぼした。

18年の展望

 17年に続いてTPPや畜産クラスター事業で牛舎を始めとした畜産・農業関連の物件が、今年一杯は相当量出そうだ。各地で公立病院や体育館、物流施設の建設も続き、インバウンド関連では外国人観光客の増加に伴うホテルやリゾートの建設が札幌や函館で進み、ニセコ地区でも鋼材使用量で1万トン超規模の建設工事が続く。空港関連では新千歳空港国際線旅客ターミナルビルや旭川空港国際線旅客ターミナルビルの増改築も本格化する。札幌市内の再開発では札幌駅前通りやJR苗穂駅周辺、帯広市や釧路市、北見市や旭川市でも中心部での再開発や著名物件の建設がスタートしている。

 中でも新千歳空港国際線旅客ターミナルビル施設再整備はA~Cの3工区合計で鉄骨約2万3千トン、鉄筋約7千トン程度の使用が見込まれるビックプロジェクトだ。同整備は官庁エリアを除いて事業費650億円を投じて、出発・到着ロビーの拡張やチェックインカウンター・保安検査レーンの増設、免税店など商業施設の拡充、ターミナルビル付属ホテルの新設などを進め、ターミナル部分・約12万4千平方メートル、ホテル部分(4~8階)・約2万500平方メートルを拡充する。工期は旅客取扱部分供用開始が19年8月、ホテル供用開始が20年1月で、昨年11月にはA工区=大林組・戸田建設・萩原建設工業・伊藤組土建・田中組・菱中建設、B工区=岩田地崎建設・JALファシリティーズ・阿部建設、C工区=大成建設・宮坂建設工業・山崎建設工業の特定建設工事共同体に施行者も決まりスタートしている。

 この他にも札幌市中心部の再開発では今年8頃月に着工予定のNHK新札幌放送会館では鉄骨約5500トン、鉄筋約2千トン、大同生命ビルの建替えで鉄骨約3300トン、鉄筋約1500トン、19年3月完成を目指す北海道ガス新本社ビルで鉄骨約3500トンなどを始め、全道で建築案件が目白押しだ。

 また、17年度に低迷から脱した土木関連でも堅調な需要が見込まれる。一昨年の台風被害に伴う復旧工事では人手不足やコンクリート製品不足、人件費や各種資機材の高騰に伴うコストアップで不調・不落が続き、年度をまたぐ工事が多数発生しそうだ。加えて北海道新幹線札幌延伸工事でも、トンネル18本のうち17年度までに10本が予備工事や本格掘削を始めており、18年も土木需要の回復が顕著となりそうだ。(斉藤 孝則)

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