星野仙一さん死去

 私事にわたって恐縮だが、長崎に生まれ育ったのになぜか「寝ても覚めても中日ドラゴンズ」という熱狂的ファンを身内に持ったせいで、「燃える男」の活躍にも派手な言動にも、知らず知らず目や耳が向いた気がする▲新春の夢を思い描く松の内に、好きな言葉は「夢」という星野仙一さんの早すぎる訃報を聞く。70歳。中日と阪神をリーグ優勝、楽天を日本一に導いたのだから「闘将」という前に「名将」と呼ぶべき人だろう▲阪神を引っ張ったころのオフ中、ベテランの多くを自由契約にして“血”を入れ替えた。非情と呼ばれたその裏に「何としても勝つ」の信念が張り付いていたとすれば、ああ、やっぱり「闘将」なのだと思い至る▲プロ野球にげきを飛ばしたことがある。「必死でやってくれたらいいの。ホーム(本塁)でさ、バーンとぶつかって、けんかになるでしょ? それでいいっていうの」▲何かと無理はせず、ほどほどに、角を立てず-と自制が重んじられる昨今、必死でやれよと叫び、必勝を期して実際に勝ってみせる人の存在が、今にしてずしんとくる▲楽天が日本シリーズを制したとき、大震災の被災地に必死の末の「V」をささげた。燃え上がるほど熱いだけではない、苦しむ人たちの肩に温かな手を置く“ほっかほかの人”でもあったろう。(徹)

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