【設立から15年・メタルワンの中長期戦略】〈岩田修一社長兼CEO〉取扱量「20年度に2500万トンへ拡大」 日本国内で1200万トン、北中米は800万トンに

――メタルワン設立から15年が経過しました。今の収益力をどう評価していますか? IFRS(国際会計基準)ベースの上期の売上げ総利益は564億円、純利益は112億円。前年同期はそれぞれ498億円、78億円で増収増益ですが、過去のピーク比では低位にとどまります。

 「取扱数量は前年度上期が1064万トン、今年度上期が1058万トンと6万トン減った。鋼材単価がトン8万3千円から9万6千円に1万3千円上がったことで増収になっているが、数量が減ったことには少し不満が残る。売る力を付けていこうと言っており、売る力を磨くことが重要だ」

メタルワン・岩田社長

 「当社のピーク時は取扱数量が約3千万トン、連結売上高が約3兆円、純利益は398億円(2006年度)が最高だった。それに比べると、鋼材単価の高低はあるが、今の売上高は年2兆円強で、純利益が年200億円強のレベル。少し寂しい感じがする。ただこれは、国内建材事業をエムエム建材に分社化したことで売上高5千億~6千億円、取扱数量が鉄スクラップ含めて約700万トン目減りしていることなどによる面も大きい。今年4月には住友商事と国内鋼管事業を統合する方向で検討を進めており、それが実現すればさらに連結売上高が減る。売上高にはこだわっていないし、利益重視で考えているが、取扱数量にはこだわりたい」

――具体的な数量目標は。

 「今年度の取扱数量は2300万トンの見込みだが、20年度には2500万トンへの拡大を目指す。かつてに比べて売る力が落ちていると考えており、売る力を磨くことに力を入れる。数量を増やし、売上高対比で近年同様の売上げ総利益を確保することで、それなりのボトムライン(純利益)が出せるようになってくる」

――2500万トンの地域別の内訳は。

 「日本国内で1200万トン、北中米で800万トン、中国で200万トン、アセアンで150万~200万トン、その他インド、ブラジルなどの地域で残りの数量と想定している」

 「米国ではカーギル社の熱延厚中板加工事業を買収する。これはインフラや産業機械分野がターゲット。既存のコイルセンター網であるコイルプラス社やメタルワンアメリカのトレードとのシナジーを発揮したい。北中米の加工数量はコイルプラス、ニコメタル、カーギル、合わせて400万トン規模に拡大する」

――そうした規模拡大で純利益300億円が確保できると。

 「20年度にはいかなる環境においても純利益300億円を確保できる収益基盤を構築したい。そのためには320億~330億円レベルを目指す必要がある。今の実力値では到底及ばず、さまざまなことを検討している」

――具体的には。

 「既存事業の中で、強いところをより強くすることに重点を置き、加えて新たな収益源を育成する」

 「国内では販売体制の再構築を考えている。特に地方での『売る力』がカギになる。今年は国内再強化に向けた手を打っていくつもりだ」

――国内では建材事業のエムエム建材との連携も重要です。

 「エムエム建材は設立3年となり、ようやく当初計画した利益数値が稼げるようになってきた。国内建材需要は当面堅調さが続くとみている。20年の東京五輪開催後も数年間は高水準の需要が続きそうだ。スタートで遅れた分を取り戻すことを期待している」

 「建材分野では、三菱商事・双日の両株主会社の情報をまだ十分に活用できていない部分もある。もっとできるはずだ。属人的ではなく組織的にやるべきだと考えており、プロジェクト開発委員会という組織を作って情報共有を進めている」

――今後の投資方針について。

 「17年度は米国でカーギル社の熱延厚中板加工事業を買収するのが最大案件になりそうだ。良い案件があれば、他にもそうした買収やM&Aといった攻めの投資も行っていきたい」

 「当社のビジネスは約6割が自動車向けとなっており、今後も自動車分野への投資が多くなる。その他、働き方改革にも関連するが、コイルセンターの自動化投資は生産効率化とともに安全衛生にもプラスに働くので投資を進める。また、すでに着手しているがRPA(ロボティックス・プロセス・オートメーション)導入などによる事務作業自動化の検討を含め、労働生産性を上げるための投資も行う」

――自動車分野では需要構造の変化も起きそうです。

 「電気自動車(EV)が増えるとすれば、電磁鋼板が増えるほか、特殊鋼の原単位が減るなど変化が起こるだろう。自動車に使われる素材に変化が起きたとしても、これまで培ってきた自動車向け素材提供の知見をさまざまな形で生かしていきたい」(一柳 朋紀)

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