金属行人(1月9日付)

 連休が明け、今週から新年の実商売始めという鉄鋼人も多いのではないか。業界首脳による年頭メッセージによれば、国際情勢や労働環境面に「不透明な事象や不安要素を抱えつつも足元の市場情勢は国内、海外ともに『着実に回復・好転』し、滑り出しは『おおむね良好』。久々に『明るさ』が実感できる」とある▼鋼材加工流通業にとっては昨年来「仕入れ値上昇への対応に苦慮」しながらも業界団体調査による「収益確保」結果を見る限り、業況は「良い」方向にあるのだろう▼肝心なのは「過度に期待せず需要実態を見極めた仕入れ、販売、在庫態勢」だと全国鉄鋼販売業連合会の阪上正章会長は会員に向けた年頭所感で強調する▼かつて首都圏で〝相場のご意見番〟と称された重鎮が「何事も『ほどほど』が大事。『過』は禁物」と諭し、空前の好況期にやや浮足立った同業をいさめつつ冷静な対処を喚起したことを思い出す。「過ちは好むところにあり」「過ぎたるは猶及ばざるが如し」のことわざもある。儒教の教えに「中庸」とあるが、大切な経営判断にも通じる教訓だ▼何が「過」なのかを見極める目こそ、過去幾多の辛苦を味わい、そのたびに乗り越えた鉄屋が備えた感性であり、それを発揮するときが到来した。

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