2000年以降は7人誕生 プレーで指導でチーム支えるパの「選手兼任コーチ」

今季、選手兼任コーチを務めるロッテ・福浦和也【写真:細野能功】

松井稼頭央はテクニカルコーチ兼任で15年ぶりの西武復帰

 昨季終了後に始まったストーブリーグでは、多くの選手が他球団への移籍を決断し、各チームが2018年の開幕に向けて新体制を整えている。そんな中注目を集めた話題の1つが、松井稼頭央選手の埼玉西武への復帰だろう。15年ぶりに所沢に帰ってきたかつてのスーパースターは、今年「選手兼テクニカルコーチ」という新しい肩書きを担うことになった。

 ここ数年、「選手兼任コーチ」の存在が目立つようになってきた野球界。セ・リーグでは元横浜DeNAの三浦大輔氏や、東京ヤクルトの宮本慎也ヘッドコーチなどが思い浮かぶが、パ・リーグではどうだろうか。2000年以降に兼任コーチに就任した主な選手を見ていこう。

○伊東勤氏(西武・選手兼総合コーチ)
 まずは、2017年シーズンまで千葉ロッテを率いた伊東勤氏だ。現役時代、埼玉西武の黄金期を正捕手として支えた伊東氏は、2002年から現役引退までの2年間、選手兼総合コーチという役割を担うことに。就任1年目は直近の5年間で最多の118試合に出場し、チームも4年ぶりのリーグ優勝。選手・コーチの両面で、見事重い責任を果たしてみせた。

○中嶋聡氏(北海道日本ハム・選手兼1軍バッテリーコーチ)
 1986年、阪急ブレーブスに入団した中嶋聡氏は、それまでの捕手像を覆すようなスマートなプレースタイルと強肩を武器に、正捕手として活躍した。西武、横浜を経て、2004年に移籍してきた北海道日本ハムでは、移籍4年目の2007年に捕手兼1軍バッテリーコーチに就任。控えの捕手として渋い存在感を示しながら、コーチとして大野奨太選手(現・中日)や市川友也選手といった主力捕手を指導している。

今岡ロッテ2軍監督、稲葉侍ジャパン監督も経験

○今岡真訪氏(千葉ロッテ・選手兼2軍打撃守備コーチ)
 阪神の黄金期を支えたクラッチヒッター・今岡真訪氏も、現役生活の終盤に選手兼任コーチを務めた1人だ。2009年に阪神から戦力外通告を受けると、トライアウトを経て千葉ロッテに加入。初年度の2010年、ポストシーズンにおいて目覚ましい活躍を見せ、チームの「下剋上日本一」に大きく貢献した。

 そして2012年、選手兼任2軍打撃守備コーチに就任。しかし、選手としては1軍試合出場はならず、この年限りで現役を引退した。その後は阪神のコーチを務めていたが、来る2018年シーズン、井口新監督の下で巻き返しを狙う千葉ロッテの2軍監督に就任することになった。今岡氏の他にも、選手としても指導者としても豪華な顔触れが揃う千葉ロッテコーチ陣。どんな化学反応が起きるのか、今から楽しみでならない。

○稲葉篤紀氏(北海道日本ハム・選手兼1軍打撃コーチ)
 昨年11月に行われた「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」で、若き侍ジャパンを率いた稲葉篤紀監督が兼任コーチとなったのは、北海道日本ハム加入9年目の2013年のことだった。その年の開幕前から打撃改造に取り組んでいた中田翔選手を筆頭に、多くの選手を指導。しかし、自身の選手としての成績は不調に陥る。これを踏まえて、翌年は選手専任でシーズンに臨むと、主に代打でチームに貢献し、この年を最後に惜しまれながらユニホームを脱いだ。

 冒頭に触れた松井稼選手のほかにも、北海道日本ハムに復帰した實松一成選手、千葉ロッテ一筋で2000本安打を目指す福浦和也選手も、2018年シーズンは選手兼任コーチの役割を担うことになる。ただでさえ過酷なプロの世界で、二足の草鞋を履きながらシーズンを戦うことは容易ではない。しかし、血の通った経験を後輩たちに伝えながら、自らの腕でも勝利に貢献する「兼任コーチ」たちの存在は、近い将来チームを背負うであろう若い選手に、かけがえのない薫陶を与えるはずだ。現役生活終盤に大役を務め上げる彼らの姿を、しっかりと目に焼き付けていきたい。

(Full-Count編集部)

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