ルノー・日産・三菱自がベンチャーキャピタルファンドを設立…5年間で最大10億ドル投資

カルロス・ゴーン氏

自動車アライアンスであるルノー・日産自動車・三菱自動車は、オープンイノベーションを支援する企業ベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ(Alliance Ventures)」を設立し、今後5年間で最大10億ドルを投資することを発表した。

同ファンドは初年度、クルマの電動化、自動運転システム、コネクティビティ、人工知能などの新たなモビリティに焦点を当てている新興企業や、技術起業家が参加するオープンイノベーションのパートナーシップを対象に最大2億ドルを投資する予定。

その後も毎年投資を行うことにより、アライアンス・ベンチャーズは2017年に発表した戦略的中期計画「アライアンス2022」の期間中、自動車業界で最大の企業ベンチャーキャピタルとなることを目指す。

アライアンスの会長兼CEOであるカルロス ゴーン氏は、「このオープンイノベーションに対する取り組みにより、我々はアライアンスのグローバルなスケールメリットを生かしながら、新興企業や技術起業家に投資し、協業することが可能となります。このファンドはまさにアライアンスの核である協働の精神と起業家のマインドセットを反映したものです」とコメントしている。

アライアンスは、10のブランドを有し、2017年には1000万台以上を販売し、主要な自動車市場すべてで事業を展開している。アライアンス・ベンチャーズの特長は、このアライアンスのグローバルな規模とスコープの広さを、潜在的パートナーに対して提供することである。

アライアンス・ベンチャーズは新興企業に投資することにより、財務リターンを確保しながら、新技術や新ビジネスをアライアンスに取り入れることが可能となる。また、新規事業の立ち上げにおけるあらゆる段階で戦略的な投資を行い、新たな自動車関連起業家の輩出や新規のパートナーシップを創出していく。

アライアンス・ベンチャーズの最初の投資先は、コバルトフリーの全固体電池素材を開発する米国企業のIonic Materials社。Ionic Materials社の株式取得は、研究開発協力を目的とした同社とアライアンスの共同開発契約の締結時に行われる。Ionic Materials社はマサチューセッツ州を拠点に自動車および多様な用途に使われる高密度エネルギーバッテリーの性能およびコスト競争力向上を可能とする固体高分子電解質を開発している。

このような投資を行うことで、アライアンス・ベンチャーズはアライアンスのメンバーが将来使用する可能性がある新技術の特定と開発の後押しをする。こうした取り組みはルノー、日産、三菱自3社の協業を強化し、2022年末までに年間100億ユーロ以上のシナジー創出を目指す戦略的中期計画「アライアンス2022」の目標達成を支えるものである。

同ベンチャーキャピタルへの最初の2億ドルの投資は、年間85億ユーロを超えるアライアンスの研究開発費とは別枠で実施される。

アライアンス・ベンチャーズを率いるのは、20年以上にわたる投資銀行での業務経験と、6年以上にわたるアライアンスでの経験を持ち、直近ではブラジル日産の社長を務めたフランソワ ドーサ氏。アライアンス・ベンチャーズのチームはその専門知識と、ルノー、日産、三菱自から集結したエキスパートから成るクロスファンクショナルチームにより見出された事業機会を活用していく。

この投資活動はアライアンスの戦略を補完するもので、クルマの電動化、自動運転システム、コネクティビティなどの分野での収益増、コスト削減、コスト回避を目指す。アライアンスは、「アライアンス2022」の期間中、EV用の共通プラットフォームおよび共用部品を活用し、100%EVを12車種投入する計画のほか、40車種への自動運転技術搭載と、無人運転車両による配車サービス事業への参画も目指している。

アライアンス・ベンチャーズは、既存の研究・先行開発チームと協力しながら、投資を行うイノベーション分野や市場を特定していく。また、ベンチャーキャピタルの専門家を採用し、同事業のプラットフォーム開発を行っていく。同ファンドは、シリコンバレー、パリ、横浜、北京にあるアライアンスメンバーの技術研究センターや、強固なイノベーションエコシステムを有するエリアの近くに拠点を設ける予定だ。

ルノー、日産はそれぞれ40%ずつ、三菱自は20%を新ファンドに共同出資し、投資判断や業績管理を行う専門の投資委員会を設置する予定。

中期計画「アライアンス2022」において、ルノー、日産、三菱自は、3社合わせた年間販売台数は1400万台以上に、また、売上高は2400億ドルに達すると見込んでいる。

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