発達障害、個別支援を 専門会社が独自メソッド開発

 アスペルガー症候群や注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症といった発達障害の療育を専門とする教育機関のニーズが高まっている。広く認知されるようになり、より積極的なサポートを求める保護者らが増えた。神奈川の県立高校3校でも4月、通級による指導に着手する。鎌倉市に本社を構える「たすく」はこの分野では珍しく、株式会社として専門療育を手掛けている。個別の支援が不可欠と訴え、独自のメソッドを体系化した。◆鍵を握る言語能力の育成 鎌倉駅から5分ほど歩いた商店街の一角にある「たすく」の教室。中学3年のKさん(15)の声が響いた。横浜の特別支援学級に通いながら月2回、ここで個別療育を受けている。「今日は腹筋を30回やります」「休憩でサイダーを飲むために頑張ります」「午後2時37分からは勉強です」 Kさんは日常生活で予定を立てることが苦手だ。一つの作業が何のために行われ、のちにどのような効果につながっていくのか−有機的に頭の中で組み立てていくことができない。例えば今行っている勉強は何を学ぶためなのか、問われて即答できないことが多いという。

 療育を担当するスタッフが、Kさんが口にした予定をノートに書き写すよう指導した。〈僕は休憩でサイダーを飲むために腹筋運動を頑張ります〉。この構文に行き着くまでにかなりの時間を必要とした。

 鎌倉地区最高責任者の大久保直子さんは「コミュニケーションが苦手な発達障害のあるお子さんでも、正しい構文を身につけることで症状を軽減できます」と、言語教育の大切さを訴える。予定を立てる行為もまた、言語能力と密接につながっている。言葉で思考するトレーニングでもあるという。

 子どもたちの豊かな社会参加を目指すためにコミュニケーションや認知、感覚統合など複数の観点でアセスメント(評価)を行う。「たすく」が独自に考案したメソッドは、トータルアプローチを軸に支援するプログラムだ。多様な障害に対応するため、40人ほどのスタッフの多くが作業療法士や臨床心理士、教師などの有資格者だ。

 自立のためには「できるだけ幼い時期から療育を始めることが大切」と大久保さん。「自分の思いを人に伝えることの楽しさや頑張ったら良いことがあるという動機づけは、療育の積み重ねによって身についていきます」

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