ソフトバンクの2018年ブレイク候補筆頭 20歳左腕の分岐点となった一戦

ソフトバンク・笠谷俊介【写真:藤浦一都】

2年連続で和田に弟子入り「続けていかないと意味はない」

 2018年は飛躍の年となるだろうか。日本一の頂に立つ戦力がありながらも、若手の成長も著しいソフトバンクで、かなり楽しみな存在だと言っていい。2018年が4年目となる笠谷俊介投手だ。

 2014年のドラフトで、大分商高からソフトバンクに4位指名を受けた左腕。入団後は故障に悩まされる日々を送ったものの、ようやく昨季1軍デビューを果たし、3試合に登板。3回1/3を投げて5つの三振を奪うなど、そのポテンシャルの片鱗を感じさせた。登板機会こそなかったが日本シリーズの40人枠に入ったところにも、チームからの期待がうかがえた。

 故障続きでパッとしない日々を送っていた笠谷を変えたのが、2017年1月に志願して参加した和田毅との自主トレだった。日本だけでなくメジャーの舞台も経験しているベテラン左腕は、オフに取り組む自主トレの厳しさでも知られる。自らを変えたい一心で、和田に頭を下げて実現したマンツーマンでの自主トレは、肉体面だけでなく野球に取り組む姿勢、精神面にも大きな影響を与え、2017年に飛躍へのキッカケを掴む一因となった。

 年が明けて迎えた2018年。笠谷の姿は、再び和田とともにあった。1月6日。福岡・筑後市のファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で報道陣に公開された和田の自主トレ。そこには、懸命に汗を流す背番号67の姿もあった。「続けていかないと意味のないトレーニングなので。1回2回やっただけで上手くはならない。やっていって投球につなげていく。やっていって間違いはないと思います」。2017年で感じた経験は、和田との自主トレを続けるに足る確信に変わった。

分岐点となったファーム広島戦、2回5Kの快投に「コレだ!」

 昨季、笠谷には己の変化、成長を感じた一戦があったという。7月28日、タマホームスタジアム筑後で行われたウエスタン・リーグ広島戦。7回から4番手でマウンドに上がると、後にウエスタンリーグを制し、ファーム日本一にも輝いた相手に対し、圧巻のピッチングを見せた。

 7回は先頭の小窪を見逃し三振に切ると、3者連続三振。8回先頭の代打・美間にはヒットを許したが、船越、庄司と連続三振に切った。2イニングを投げて5三振。ストレートは常時140キロ台中盤をマークした。「あの時に手応えがあった。あの試合がターニングポイントですね。イメージしていたのがコレだ!と。力感なく投げてもボールがいっていて、コレやと思いました」。やってきたことは間違いではなかった、そう確信できた瞬間だった。

 2年目となる和田毅との自主トレ。今年は育成選手の伊藤祐介、斎藤誠哉の2人が加わり、1月半ばからは昨季のドラフト1位・田中正義も参加する。昨年の2人から5人に増えるが、笠谷は“和田門下”では1年先輩だ。「継続してやっていって理解できること。去年は初めてで緊張とかもあって聞けなかったことがある。今年はどんどん聞いていきたいと思います」。より一層の成長を遂げるために、1年目以上に積極的な姿勢でいる。

「元は先発なんで、先発で勝ちを挙げたいです。体力もいりますし、それも意識してやっていきます。左投手は先発が華なので、チャンスがあればそれを掴みにいきたい。監督の期待に応えたいというのはありますし、それだけのものを見せないといけないと思っています。チャンスを掴んでいきたい」と、笠谷は2018年の目標を掲げた。

 2017年は石川柊太、甲斐拓也、上林誠知などが台頭した。2018年、彼らに続く存在となるのは、この男かもしれない。

(Full-Count編集部)

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