関西地区 アルミ関連メーカーの技術と商品戦略

 生産合理化、オリジナル商品、新技術など、関西地区のアルミ関連メーカーの取り組みを紹介する。(白木 毅俊)

東洋アルミニウム

ステンレスフレーク含有塗料「ステンシェル」

 同社は箔、パウダー・ペースト、ソーラー、日用品が事業の4本柱。一押しの独自商品ではステンレスフレーク含有塗料「ステンシェル」と成形型副木「サーマルギプス(THERMAL GIPS)」がある。

 ステンシェルは塗料中のステンレスフレークが積層されることにより、個々のステンレスフレークがステンレスの鎧(よろい)効果を発揮、サビや樹脂の劣化へのイメージを大きく変える塗料だ。「例えばアワビの貝殻は一定の厚さでレンガが積み重なったような構造体だが、ステンシェルも素地の上にステンレスフレークが幾層にも積み重なり防錆効果を発揮する」(大久保嘉彦新事業創造部担当部長)。

 さらなる特長は、ステンレスの鎧の丈夫な塗膜を重ね塗りすることで、錆びや樹脂の劣化に対してより強固な保護層が形成できるところにある。

 「ステンシェル」塗料を重ね塗る塗装は、汎用塗料の重ね塗りよりも、少ない塗装回数で同様の性能が引き出せる。このため施工費用の軽減や塗装期間の短縮が可能だ。

 一方、サーマルギプスは鼻用と指用がある。同製品は国が定めた特定医療保険材料で副木の中の「軟化成形使用型」に該当する。素材は熱可塑性樹脂で、お湯につけるだけで形状が自由にコントロールでき、鼻や指をしっかりと保護・固定する。サーマルギプスは他社商品に比べて強度は約2倍、熱伝導率が約4倍と高い機能性を持つことも特長。「上市して間もないが、医療関係者の評価は上々」(松井哲也新事業創造部担当部長)という。

アルミネ

世界で唯一の連続鋳造圧延

 独立系のアルミ素材メーカー・アルミネ(大阪・東京両本社、社長・竹内猛氏)は、世界で唯一の連続鋳造圧延方法により地金から高品質なアルミ線・棒・板・条を一貫生産している。製造拠点は国内3工場(三隅・川上・大阪)で、年産量が約37000トン。海外はベトナムにアルミネ・ベトナムを持つ。連続鋳造圧延は同社が独自に開発した製造方法。これにより2000系、7000系をつなぎ目なく製造が可能で、世界唯一の生産ラインと評価が高い。

 アルミニウム合金線・棒の生産は主力工場の三隅で、板・条生産は川上で、伸線加工を大阪で行っている。「アルミネの線、棒、板、条は単なる鋳造製品ではなく、連続鋳造圧延製品だ。凝固の瞬間に圧延することで結晶粒が超微細化され、〝巣〟が入らない。この圧延方法により、連続かつ偏析のない均一組織の素材が製造できる」(竹内社長)。

 課題は国内では6000系・3000系の板条製品の拡充、海外ではベトナム事業の強化。自動車・航空機用素材として、いっそうの拡販を目指している。アルミネ・ベトナムは月産量が昨秋に1千トン超になるなど、軌道に乗ってきた。「ベトナム材を日本市場で販売する方針で、顧客にはその認証をお願いしているところ。製品は国内と全く同じであり、国内工場の負担軽減にも寄与する」(同)。

 三隅工場は今後5年をめどに、現在の敷地の約3倍(約3万坪)に拡張する。「工場拡張では、完全無公害と無人化を追求し、工場の公園化を進める。『世界一のアルミ線工場』をつくりたい」(同)。

片木アルミニューム製作所

設備効率化で業容拡充

 同社(本社・大阪府泉南市、社長・片木威氏)は1948年設立のアルミニウム(Al)圧延メーカー。溶解から最終製品まで一貫生産しており、国内の中堅アルミ圧延メーカーでは唯一、0・2ミリ以下の薄板材を製造している。製造拠点は泉南工場(大阪府泉南市)と大山工場(鳥取県西伯郡)の2カ所。大山工場には国内唯一の水平ロール方式連続鋳造機を置き、薄さ70ミクロンの薄板が製造可能だ。両工場の年産量は約1万トン。従業員数は127人。

 昨年11月、省エネおよび生産の効率化のため本社工場の4段冷間圧延機を約5千万円かけて更新した。圧延機の電動機を交流機に切り替えたことなどで、生産効率が約20%向上したという。「入り側送り装置および巻き取りも自動化し、作業時の安全性をより向上させた。今回の電動機と制御盤の更新で、故障も未然に防ぐことができる」(片木社長)。投資額は約5千万円。

 昨秋、省エネ関連では大山工場(鳥取県西伯郡大山町)の全照明を約900万円かけてLED化している。

 独自製品では耐食性を高めたプレコートAlフィン材「DCEXP」、銅とマグネシウムを少量添加した「Al光輝合金材」などを持つ。「キズや精度など、需要家の品質への要求は高い。メーカーとしてその要求に応えるため、愚直な姿勢で日々、ものづくりに取り組んでいる」(同)。

日本圧延工業

トップシェアのアルミスラグ

 日本圧延工業(本社・滋賀県東近江市、社長・磯部正信氏)は1935年の設立。2016年8月には非鉄総合商社・川嶋(本社・川嶋義勝氏)を中心とした川島グループ傘下で新発足しそれを機に本社を移転、昨春には営業所(東京・大阪)2カ所を移転した。従業員は106人。「新発足から1年5カ月、メーカーとしての基盤づくりに取り組んできた。スローガンとして『いますぐ挑戦、DASH!(奪取)5・5・10』運動に取り組んでいる。これは川島グループの行動指針『いますぐ挑戦』を踏襲、その上で製造原価においてキロ5円、原料調達で同5円それぞれ下げ、売り上げ単価では同10円を改善しようとの目標だ。アルミスラグは国内トップシェアを維持している。設備など経営基盤を整えつつ、守りから攻めの経営へと転じたい」(磯部社長)。

 設備投資関連ではこの1年余で、集じん機を湿式から乾式へ切り替え、重量スケールやコンテナスロープを新たに導入。一方、鋳造圧延設備は2ラインの内1ラインを撤去、溶解炉も6基の内2基を廃棄した。これらの投資額は1億5千万円。今期(18年7月期)は売上高32億円、経常利益1億5千万円を予想している。「アルミ溶湯から直接に圧延板を造る、熱間連続鋳造圧延は高生産性が特長。加えて小ロット、短納期対応にも努めている。川島グループからアルミスクラップの供給を受けるなど、新たな試みも始めている」(同)。

和伸工業

高度な寸法加工のアルミ抽伸材

 和伸工業(本社・大阪府堺市、社長・吉井裕司氏)は1950年設立のアルミニウム製品メーカー。本社工場で7トン反射炉など鋳造設備を駆使して、アルミニウムおよびアルミニウム合金の形・管・棒・鍛造素材を一貫生産しているのが特長だ。月間生産能力は1千トンで、足元の月産量は650トン。系列販社には和伸商事を持つ。ベトナムでは神鋼商事との現地合弁「ビナ・ワシン・アルミナム(VWA)」で、アルミ押出・加工事業を展開。VWAの足元の月産量は約200トン。

 和伸工業の一押し商品はアルミ抽伸材だ。冷間加工であるため、高度な寸法加工が可能であり、自動車、二輪車、OA機器、ポール材などの幅広い分野で使われている。数量を追うのではなく質で勝負する、というのが和伸グループの経営戦略だ。「当社グループでは小ロット、多品種、短納期に注力している。抽伸材の市場は縮小傾向にあるが、JIS公差でプラスマイナス100分の8程度と精度が非常に優れている。17年暦年のアルミ抽伸材の年間販売量は520トンとなる見込みだが、来期は570~580トンを目指している」(吉井社長)

 和伸グループはこのほど、新たな3カ年中期経営計画を策定した。その骨子は(1)2020年の経常利益目標は2億円(2)2017年に比べ、各部署の目標数値を2020年に20%改善・向上させる(3)重大災害・重大クレーム0(ゼロ)を目指す運動を新たに立ち上げるなど。この中計を指針として、いっそうの業容拡充を目指している。

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