熊本の清流が育む米の酒「球磨焼酎」とは?人吉温泉・焼酎をめぐる旅のすすめ

熊本県で盛んに作られる「球磨焼酎」をご存知ですか? 500年の間、人吉・球磨地域のみで作られてきた香り高いお米の焼酎は、200以上の銘柄がありとっても個性豊かな味わいなんです。製法や銘柄による味の違いやおすすめの飲み方、そして温泉街で焼酎を楽しめる酒蔵やお店について、のんべえ女子・もーさんの目線でお伝えしていきます!

球磨焼酎ってどんな焼酎?

球磨焼酎は、熊本県南部の人吉・球磨地域で作られている焼酎です。焼酎の原料と言えば芋や麦が定番ですが、球磨焼酎は「お米」が原料。豊富な水と盆地である地形により稲作が盛んだったこと、気候が暖かく日本酒造りにはあまり適さないことから、500年も前から焼酎作りが始まったと言われています。今も28の蔵元で200もの個性豊かな銘柄が作られています。

出典: http://houmukyoku.moj.go.jp

この球磨焼酎、実は大変希少なブランド酒の一つ。WTOにブランド名として地名を使うことを認められ、日本で四つしかないお墨付きの銘柄焼酎なのです。
国税庁によると、球磨焼酎の定義は以下の通り。

米こうじ及び球磨川の伏流水である熊本県球磨郡又は同県人吉市の地下水(以下この欄において「球磨の地下水」という。)を原料として発酵させた一次もろみに米及び球磨の地下水を加えて、更に発酵させた二次もろみを熊本県球磨郡又は同県人吉市において単式蒸留機をもって蒸留し、かつ、容器詰めしたもの

つまり、おおまかに言うと
・原料として米を使う
・球磨郡または人吉市の地下水を使用する
・球磨郡または人吉市で蒸留する
この3点を守って作られたものだけが、球磨焼酎と呼べるものになります。
(なお球磨以外の地域では、壱岐・琉球・薩摩の三つの焼酎がWTOの地理的表示ブランドとして認められています。)

*壱岐焼酎についてはこちらでも紹介*
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早速、球磨焼酎28蔵の銘柄をずらっと並べて詳しく味見を……といきたいところですが、その前に味の違いを生み出す「製法」について簡単に解説。焼酎は米や麹を蒸留して作られますが、蒸留方法は主に2種類あります。
・常圧蒸留式:球磨焼酎の伝統的な製法。通常の大気中と同じ圧力の中で蒸留する方法で、独特の豊かな風味が強く出ると言われます。
・減圧蒸留式:現代の焼酎の製法として一般的なもの。蒸留器内の気圧を下げ、低い温度で沸騰させて原酒を取り出すため、雑味がなくクリアな味わいが特徴です。

飲んだことある?球磨焼酎の銘柄一例

製法の違いを知ったところで、私が人吉市を訪れて実際に飲んだものの銘柄と特徴をみていきたいと思います。

■球磨の泉

昔ながらの酒造道具を使った、伝統的な製法を守り続けている那須酒造場さん。手作りのもろみで仕込んだ常圧蒸留「球磨の泉」は、長期貯蔵による深いコクが楽しめます。ちなみに、人吉を訪れて最初に飲んだのがこのお酒です。「いきなり上級者向けだね!」と言われました……。しっかりとした味わいで、これがTHE球磨焼酎の味か!と、鮮烈に感じたのを覚えています。

■彩葉

すっきりと上品でフルーティーな香りが楽しめる「彩葉(さいば)」は、女性や初心者の方にも飲みやすい一品です。蔵元の深野酒造さんでは彩葉とは対照的に濃厚な味わいの銘柄「誉の露」なども作っています。蔵見学を受け入れており、運がよければ秘蔵酒の試飲もできるそうですよ。

■川辺

人吉市街にて、50もの銘柄を作る繊月酒造さん。こちらの「川辺」は、清流・川辺川の伏流水と流域の相良村でとれたお米で作られ、澄み切った香りと味わいで国際的な品評会でも評価されています。飲み飽きない口当たりはもちろんですが、シンプルなラベルも私好み!

いかがでしょうか? ほんの数点見ただけでもとても個性豊かであることがわかります。この他、球磨焼酎には「鳥飼」や「しろ」といった有名な銘柄もいくつかあるので、飲食店などで一度は見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。

さて、ここまでは球磨焼酎の基礎知識や、銘柄の個性などを見てきました。いよいよ、ご自宅で・もしくは現地で飲む際のおすすめ情報をお伝えしていきたいと思います。

球磨焼酎をじっくり味わう飲み方とは?

球磨焼酎の魅力の一つが、立ち上る芳醇な香り。この香りをより楽しむ、「お湯割り」や「直燗」といった飲み方が人吉・球磨地域ではポピュラーです。

伝統酒器「ガラ・チョク」

お湯割りは、先にお湯を酒器に入れてから焼酎を注ぐのがコツです。出来上がりが熱過ぎないほうが繊細な味わいを楽しめますよ。
また、直燗(じきかん)はストレートまたはあらかじめ水割りした焼酎を温める方法です。人吉・球磨ならではの酒器「ガラ」に入れて直火にかけ、「チョク」と呼ばれるおちょこに注いでまろやかな風味を楽しみます(ガラ・チョクがなければ普通のとっくりなどで湯せんしても◎)。

人吉温泉で焼酎めぐりを楽しもう!

最後におすすめしたいのは、産地である人吉・球磨で焼酎の蔵やお店をめぐる旅。日本酒の産地で酒蔵に訪れるツアーはよく目にしますが、焼酎の蔵に訪れる機会はあまり多くないのではないでしょうか。人吉温泉では球磨焼酎の酒蔵を訪れつつ飲食店で球磨焼酎を楽しむという充実した体験ができるんです。今回は人吉駅から徒歩でのアクセスが可能なスポットを6箇所ピックアップしました。

■焼酎蔵:繊月酒造

地元で多くの人に愛飲されている代表銘柄「繊月」や、先ほど紹介した「川辺」などの人気銘柄を造る繊月酒造さん。人吉城と球磨川を望むロケーションで、蔵の見学や焼酎の試飲などができる酒造場です。敷地内にはなんと足湯も設置されており、観光客の人気を集めています。

【URL】http://www.sengetsu.co.jp/
【営業時間】9:00~17:00 (最終受付16:30)

■焼酎蔵:渕田酒造場

落ち着いた温泉の町並みに溶け込む、昔の町屋作りそのままの建物が目を引く渕田酒造場さん。蔵の中の見学と、雰囲気たっぷりのカウンターバーでのテイスティングが楽しめます。華やかな吟醸香の代表銘柄「Fuchita」はもちろん、それを貯蔵して味わいを変化させた古酒もぜひ飲み比べてみたいものです。

【URL】http://fuchitasyuzoujyou.com/
【営業時間】10:00-12:00/13:00-16:00(第2・第4土曜定休)

※蔵見学の際は、待ち時間なくじっくりとお話をお聞きするためにも事前に連絡することをおすすめします。

■飲食店:CHABO

「大衆酒場 CHABO」は、地元の人々にも愛される居酒屋。28蔵元の球磨焼酎をはじめとする地酒や手作りのおつまみがゆったりといただけます。一番人気は熊本名物・赤鶏のさしみやタタキ。弾力のある歯ごたえとさっぱりした旨みが香り豊かな焼酎にぴったりです。

【URL】http://www.chabo-hitoyoshi.jp/
【営業時間】18:00~23:00(水曜定休)

■酒販店:一期屋

球磨川のほとりに佇む蔵づくりのお店・一期屋さんは、球磨焼酎全28蔵の焼酎を扱う酒販店です。趣のある店内では、バーカウンターでの有料試飲や希少な古酒の量り売り、お洒落にデザインされたオリジナル球磨焼酎グッズの販売も。人吉ならではのお土産選びにおすすめです。

【URL】http://www.kuma-shochu.com/page0108.html
【営業時間】 9:00~18:00(有料試飲受付16:00迄 )

■観光スポット:鍛冶屋町通り

城下町の趣が残る石畳の通りに、みそ・しょうゆ蔵やお茶屋、刃物店などが並びます。浴衣で散策するのにぴったりの風情あるスポットです。

【所在地】人吉市鍛冶屋町付近
【URL】http://kumanago.jp/event/?mode=detail&id=430000004051

■立ち寄り温泉:新温泉

人吉温泉街には多くの温泉旅館がありますが、あえてディープな立ち寄り温泉を紹介。創業80年を越える「新温泉」は、外観・内観ともに昭和にタイムスリップしたかのような雰囲気が魅力です。入り口が男女で分かれており、番台で料金を払って入場。シャワーやロッカーはありません。夜遅めの時間まで営業しているので、夕飯の後に一っ風呂、という使い方もできます。

【所在地】熊本県人吉市紺屋町80-2
【営業時間】13:00~22:00

暖かい雰囲気と味わいがたっぷりで、ぜひ立ち寄っていただきたいスポットばかりです(すっかり酔っ払ってしまいそうですが…笑)。熊本と言えば熊本城、焼酎と言えば鹿児島、だけじゃない、新たな発見ができる旅になりそうですね。

人吉市に訪れる際には、先日別の記事で紹介した「特急かわせみ やませみ」や「SL人吉」といった鉄道の利用がおすすめです。歴史と地の恵みが息づく球磨焼酎と、人吉・球磨地域の奥深い魅力を見つけにぜひお出かけください。

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