三菱マテリアル、新「金錫合金ペースト」開発 洗浄工程不要で生産性向上

 三菱マテリアルは15日、世界で初めて洗浄工程を必要としない金錫合金ペーストを開発し、サンプル出荷を開始したと発表した。接合信頼性の向上が見込めると同時に、熱処理後の洗浄工程が不要となるため、洗浄剤および廃液処理にかかる費用と環境負荷の低減、洗浄工程のスリム化による生産性の向上なども期待できる。高輝度LEDヘッドランプや殺菌用UV―C・LEDランプなどの高い放熱性と接合後の信頼性を要求される用途で拡販を図り、22年に年間25億円規模の売り上げを目指す。

 金錫合金ペーストの接合では、金錫合金の粉末表面および接合面の酸化膜を除去することで粉末表面と接合面との濡れ性(溶けた金属が固体上で弾かれずに広がる性能)を高めることが必要だが、従来品ではこの酸化膜除去の役割は高耐熱ロジン(松脂)をベース材としたフラックスが担っていた。ただ、このフラックスが高耐熱であるため、熱処理工程後に不具合の原因となる残渣が発生するため、これを除去する洗浄工程を必要としていた。一方で最近では熱処理工程でギ酸による還元雰囲気を作る装置が需要家側で普及し、金錫合金の粉末表面の酸化膜除去が可能となっている。そこで需要家のニーズに合わせ、熱分解温度が低い新規フラックスを用いた金錫合金ペーストを開発した。

 今回開発したペーストは、従来品の特長に加え、熱処理後のフラックス残渣が劇的に低減され、洗浄工程が不要となるほか、低温下でフラックスが分解されるため、金錫合金の粉末表面の酸化膜除去にかかるギ酸による還元効果を最大限に向上できる。また、従来品のフラックスに含有していたハロゲン系活性剤は、ペーストの安定性に影響を及ぼしていたが、これを一切使用しないため、保証期間・有効使用期間が長いことも特長の一つ。

 金錫合金ペーストは、一般的な鉛フリーはんだに比べ高い融点を有し、高い熱伝導性と接合後の信頼性に優れる。また、ペースト状態であるため、スクリーン印刷、ディスペンス塗布、ピン転写などの工法への応用度が高く、さまざまな形状の接合部にスピーディに使用できるという特長がある。

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