悲劇繰り返さぬために 油症教訓にフォーラム 福岡

 1968年に起きた国内最大の食品公害で、本県にも多数の被害者がいるカネミ油症事件を教訓に、安心安全な食育環境の構築を目指す「油症学フォーラム」が23日、福岡市東区の福岡工業大であり、被害者が「悲劇を繰り返さないためにも関心を持ち続けてほしい」と学生らに訴えた。

 フォーラムは、元九州大准教授の長山淳哉氏(環境遺伝毒性学)を座長に2012年に始まった。今回は研究者、弁護士、被害者、支援者計4人が「食品公害を考える!カネミ油症事件の歴史認識、新認定と次世代」をテーマに講演した。

 最高裁で係争中の新認定訴訟の原告団共同代表の一人で、福岡県大牟田市の森田安子さん(61)=五島市玉之浦町出身=は、カネミ油摂取後から現在までさまざまな病気で苦しんでいることや、子どもたちにも爪や皮膚の異常といった油症特有の症状が現れていることを説明。「国は次世代の健康実態調査を一日でも早く実施し、子どもたちを救う責務がある」と力を込めた。

 長山氏は油症患者の母親の血中や臍帯(さいたい)のダイオキシン類濃度から、子どものダイオキシン類摂取量が推定できる可能性があるとし「次世代、次々世代への影響を調べる手掛かりになるのではないか」と指摘した。カネミ油症被害者支援センター(YSC、東京)の藤原寿和氏は「未認定患者の救済の道を広げるためにもカネミ油症被害者救済法の見直しに向けて活動していきたい」と話した。

(2014年10月24日掲載)

「被害を繰り返さないために関心を持ち続けてほしい」と訴える森田さん=福岡市東区、福岡工業大

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