「アメリカにはF1にふさわしい若手ドライバーはいない」とハース代表が発言、アンドレッティらが憤慨

 ハースF1チーム代表ギュンター・シュタイナーの、「アメリカ人ドライバーのなかにF1でデビューできるレベルに達している者はいない」という発言に、元F1世界チャンピオンであるマリオ・アンドレッティを含む複数のアメリカのモータースポーツ関係者たちが怒りを示している。

 アメリカ国籍のチームとしては30数年ぶりにF1に参戦したハースが、アメリカ人ドライバーを採用していない理由について、最近、シュタイナーは次のような発言をした。
「アメリカ人だというだけである程度のレベルで戦えないようなドライバーを走らせるのは、F1にとってよくないことだ」
「優秀なドライバーがいれば、最有力候補として考える。実際、アメリカ人ドライバーを走らせたいと思っている。しかし優秀なドライバーが、果たして我々のチームに入りたいと思うだろうか?」
「私の見解では、今アメリカにF1を走る準備ができているドライバーはいない」

 シュタイナーのこのコメントが、アメリカのモータースポーツ関係者たちのなかで騒ぎを引き起こした。

 マリオ・アンドレッティにとって、この発言は受け入れがたいものだったらしく、自身のツイッターで「誤りだし傲慢だ!」と短く評し、元F1チャンピオンのデイモン・ヒルらが、これをリツイートした。

 アンドレッティはイタリア生まれだがアメリカ国籍を持ち、1968年から1982年にかけてF1ドライバーとしてロータス、マーチ、フェラーリ、ウイリアムズなどのチームで走り、1978年にはF1チャンピオンとなった。

 直近でF1を走ったアメリカ人ドライバーは、アレクサンダー・ロッシだ。2012年からケータハム、マルシャでFP1に出場した後、ロッシは2015年シーズン中にマノー・マルシャF1チームで5レースに起用された。しかし2016年のレースシートを獲得することはできず、インディカーに転向。2016年のインディ500で勝利を挙げた。

 ロッシ自身はシュタイナーのコメントに関してSNSで反応をしていないが、彼と仲の良い友人で同じくインディカーに参戦するコナー・デイリーは、ストレートに怒りを示した。元F1ドライバー、デレック・デイリーの息子で、GP3やF2の前身GP2に参戦した経験を持つ彼は、「どうすれば『アメリカの』チームなどと名乗っておきながら『故郷の』国籍を持つドライバーをそこまで罵ることができるんだ?」と発言している。

 インディ500優勝経験者でジャガーF1チーム代表を務めたボビー・レイホールの息子、グラハムも、デイリー同様に憤慨している。シュタイナーのコメントを「まったくのたわごとだ」と切り捨て、さらに以下のようにツイートした。

「ハースF1チームの考え方はいつもおかしい。『アメリカ人は十分なレベルにない』と言うばかりで、僕たちにチャンスを与えようとしたこともない」

 シュタイナーは以前、インディカーの2017年チャンピオンであるジョセフ・ニューガーデンのF1参戦の夢に否定的な発言をして、インディカー関係者たちの怒りを買ったことがある。

 2017年にニューガーデンは、さまざまな種類のオープンホイールカテゴリーで走るのが昔からの夢であり、当然F1でも走りたいと語った。その際、シュタイナーは以下のようにコメントした。

「ジョセフが成功しないと言っているわけではない。だが、(F1は)簡単に飛び込んでくることができる世界ではない」

「別のシリーズからF1に飛び込んできたら、困難が伴う」とシュタイナー。「それまでよりもはるかに大きな、すさまじいほどのプレッシャーにさらされる」

「3戦走って結果が伴わなければ、自分がどうなるか分かるはずだ。無能だと判断されて去らなければならない」

「アメリカ人ドライバーを起用した結果、失敗させてしまったら、彼にとって良くないことだ。アメリカにおけるF1にとっても、我々にとっても良くないことなのだ」

 シュタイナーは、ハースとしては2019年にも現行のロマン・グロージャンとケビン・マグヌッセンという欧州の国籍を持つふたりのラインアップを継続したいという意向を示している。

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