【JFEエンジニアリング・環境本部の現状と展望】〈澁谷榮一取締役に聞く〉今年度受注1.5倍の1700億円へ 〝公共サービスの民営化〟に積極対応

 JFEエンジニアリングの環境本部は、ごみ処理などの環境プラント事業や水処理などのアクア事業を統括する同社の中核本部。本部長の澁谷榮一取締役に、事業の現状と展望を聞いた。(村上 倫)

――事業の現状は。

 「17年度の環境本部の受注高は1700億円程度と前年比1・5倍の伸びとなりそうだ。国内では東京・目黒の環境プラントのEPCを受注したほか、長野県・穂高でも契約に至りそうな状況。設備の基幹改良工事についても仙台や盛岡、丹波篠山などで受注しており、設計・工事部隊は多忙だ。国内案件は盛んで順調に伸びている。このペースを保っていきたい」

JFEエンジニアリング・澁谷取締役

――海外では。

 「海外受注高は250億円程度。昨年、ミャンマーでごみ焼却施設が竣工した。日当たり処理能力60トンと小ぶりだが発電設備も備え、CO2削減の二国間取引の枠組みに当てはめることで日本から補助金も出ている。これをモデルケースとして、同様のニーズを持つ顧客に見学してもらい、拡販につなげたい」

 「またシンガポールでは、シンガポール南洋理工大とガス化溶融炉の実証プラントの建設を進めている。今年12月には完成予定で、同国のごみで性能を発揮できるかを確認していく。ガス化溶融炉の販路拡大を図りたい。さらにフィリピンでは、同国最大の浄水場の更新工事を受注している。当社は同国で約30件の下水処理施設建設の実績があり、東南アジアの上下水道に積極的に取り組んでいく」

 「東南アジアでは、施設を建設した後できちんと運転できるかが重要。現在は当社の社員が約1年間スーパーバイザーとして運転技術を指導している。加えて、プラントの維持・メンテナンスも重要なファクターだ。所期の性能を発揮しつつ長く使ってもらえるよう、顧客からメンテナンスを請負っている。海外のプラントの運転は全て担っていきたい」

――18年度の見通しは。

 「受注高は1800億円を目指す。国内のごみ処理施設の発注量は4千トン程度と前年と同様の水準となりそうだが、プラントを建設しその運営も担うDBO案件が増加し、EPCは減少すると見ている。海外は東南アジアでさまざまな種まきをしており、市場を開拓していく。また、欧州におけるごみ焼却施設の市場は、埋立規制などにより回復基調となってきた。ドイツの子会社、スタンダード・ケッセル・バウムガルテと連携して売り上げを拡大したい。アクア事業もODAの補助金が拡大傾向にあるなどよい環境が続きそうだ。排水処理設備などをターゲットに受注拡大を図っていく」

――長期的な展望は。

 「公共サービスを官から民へ委託していく動きは加速しており、昨年4月にPPP事業部を設けDBO案件を主体にメンテナンスなどを行っている。現在、DBOで手掛けたごみ処理施設は9件が稼働しており、横浜本社のリモートサービスセンターで管理している。運転・維持管理などごみ処理の民営化の手助けができるよう積極的に取り組んでいく。また、ごみと下水を処理して発電するといった複合案件が増えそうで、すでに新潟・長岡や愛知・豊橋などで具体的な動きが出ている。専任部隊を設けて対応しているが、20市町村程度に興味を持っていただいており手応えを感じている」

 「現在、設計や技術部隊は非常に繁忙。海外拠点も含めたグローバルエンジニアリング体制の確立を進めており、設計拠点の連携を効率的に行い、国内外の案件で生かしていきたい」

――技術開発の方向性は。

 「開発を進めていたボイラのクリーニング装置は本格展開している。現在20基弱が導入され、民間からのニーズも出るなど売れ筋商品となっている。民間の工業炉などでの適用も図りたい。また、高効率発電のためにボイラの高温・高圧化に取り組んでいるが、現在、450度まではいけるようになった。発電効率30%超えを目指していきたい。高温・高圧化を進めると灰がつきやすくなるが、クリーニング装置はこの除去にも有効で、既存の炉にも後付けできる」

 「また、昨年4月から排ガス規制が強化され、東京・調布などでは水銀濃度が基準値を上回ると炉の稼働を停止しなければならない。そこで、タイムリーに水銀濃度を基準値以下にするための水銀除去装置を開発した。必要な活性炭も半減できる差別化技術で成果も出てきている。さらに最適操業支援システム、JFEハイパーリモートでは8工場の運転管理を行っている。現在、AIを用いて運転ノウハウなどを蓄積し、ベテランの技術をAIで実現できるような取り組みを進めている。将来的には技術的な運転サポートなどを音声認識でできるような開発も進めたい」

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