東京五輪セーリング、ボランティア講座人気 藤沢

 2020年東京五輪・パラリンピックに向け、五輪のセーリング競技会場の江の島がある神奈川県藤沢市が、海外から選手や観客を迎える準備を本格化させている。14日に市が開いた市民ボランティアの役割や魅力について考えるフォーラムには、350人を超える市民が参加。今月下旬からの養成講座も定員が既に埋まっており、「おもてなし」の機運が徐々に高まっている。

 「オリンピック、パラリンピックは世界最大のショー。皆が楽しむためには、地元のコミュニティーが重要な役割を担っている。市民の皆さんの力なくして、成功はあり得ません」 14日に湘南台文化センター(同市湘南台1丁目)で開かれたフォーラム。12年のロンドン五輪の際、セーリング競技会場となった港町ウェーマス・アンド・ポートランドで、ボランティア運営の責任者を務めたサイモン・ウィリアムズさんは基調講演に立ち、こう呼び掛けた。

 ロンドン五輪では、大会運営と観光の2分野で市民ボランティアが活躍。ウィリアムズさんが担当した町でも、地元市民約560人が観光ボランティアである「アンバサダー(観光大使)」として、駅や競技会場付近で来場者の案内や観光情報を提供した。

 「アンバサダーの主な役割は、観客を歓迎し、目的地まで安全に移動できるようサポートすること」とウィリアムズさん。アンバサダーになるためのプログラムを実施し、受講することを条件とした。

 スポーツに興味がない人でも楽しめるようにと、2カ月間で80以上の文化イベントを開催。地元の子どもたちによるダンスやコーラス、プロの演劇団によるパフォーマンスなどが連日行われ、街全体の盛り上げに一役買った。

 約6万5千人の小さな町に、大会期間中は1日最大約10万人の観光客が訪れたが、大きな事故やトラブルはなかったという。成功の秘訣について、ウィリアムズさんは「最も大切なのは人。市民一人一人が活躍した結果、忘れられない夏になった」と話す。

 フォーラムではパネルディスカッションもあり、「ボランティアの力を藤沢のまちづくりにどう生かせるか」との視点でも議論。「若者がリーダーとして活躍できる場にしたい」「五輪後も、さまざまなボランティアがつながるネットワークをつくりたい」といった意見が交わされた。

 市は、ウェーマス・アンド・ポートランドをモデルにボランティア800人を養成する予定。今夏の募集開始を前に、今月末にスタートする講座の定員は1日で埋まったといい、市の担当者は「関心の高さがうかがえる」と話している。

© 株式会社神奈川新聞社