【大同特殊鋼・渋川工場 課題と展望】〈吉永祐孝工場長に聞く〉次期中計、高合金比率40%に拡大

物流改善、リードタイム30%短縮へ

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――渋川工場は近年、高合金火造品(高耐熱・高耐食自由鍛造品)の強化策で大掛かりな設備増強を進めている。この狙いと主な投資内容を伺いたい。

 「航空機エンジン部材やガスタービン発電用ディスクは着実な成長市場であり、高合金、再溶解といった渋川工場の特徴を十分に発揮できる市場でもある。航空機・重電向けを着実な軸足として成長させつつ、オイル&ガスや造船・プラント・産機向けも幅広く高付加価値製品とりわけ高合金の拡販を進める」

 「2008年導入の7千トン自由鍛造プレスとの組合わせで高合金の大型・中型タービンディスクの製造体制を整えるなど、高合金火造品の大型化対応や生産効率向上を進めるため、16年6月に世界最大級の25トンVIM(真空誘導溶解炉)を稼働した。これに合わせて再溶解設備も増強し、VAR(真空アーク再溶解炉)1基を15トン炉に更新し、15トンESR(エレクトロスラグ再溶解炉)1基を新設した」

大同特殊渋川工場・吉永工場長

――19年稼働予定でVAR2基を増設する。

 「航空機需要は予測通りの伸びを示し、大型・中型の高合金ディスクの新規拡販活動も順調で、半導体向けのクリーンステンレスやインバー合金の需要も旺盛だ。このためVAR増強を実施する。いずれも15トン炉で、5メートル以上の長尺鋼塊を効率的に再溶解できる。19年4月に1基、7月にもう1基の立ち上げを目指す」

 「現在の渋川の一次溶解量は月1万トンで、うちVIM(全4基)が1200トン超。一方、再溶解量は3200~3500トンでフル稼働状態にある。中期的にVIMは1800トンへと5割拡大する計画で、それに見合う再溶解設備に増強する。VAR2基の増設で渋川の再溶解設備はVAR10基、ESR9基になる」

――航空機エンジン部材ではシャフトで約4割の世界シェアを握る。どんな成長イメージを。

 「民間航空機の運航機体数は向こう20年で約2倍に増加する見通しで、複数の新型エンジンシャフトの製造認定作業を継続しシェア拡大を目指す。メニュー拡大による数量増に合わせて、竪型熱処理炉や機械加工設備、水浸超音波検査装置など下工程の能力拡大も随時行っていく」

――ガスタービン関連は。

 「高効率・安定的なベース電源として航空機同様に着実な増加が見込まれる。渋川では従来の低温度域・圧縮機側から高付加価値の高温度域へのプロダクトミックスのシフトに取り組み、製造認定の準備も進めている」

――渋川の高合金火造品の拡大は長期にわたる成長戦略だが、当面どの程度の高合金比率を目指すのか。

 「(ニッケル含有率30%以上の)高合金の売上比率は、社内他工場向けを含めて17年度上期が約30%だった。次期中期計画では最終20年度に約40%を目標にする」

――次期中期における渋川の重点課題は。

 「物流改善が大きな課題だ。渋川は量産品(鍛延品)も単品(火造品)も生産する。この製品構成ゆえ、特に鍛造以降の工程で相互の流れが混同して複雑な流れになっている。まずは量産品と単品の流れをできる限り分離し、量産品の流れをスムーズにする。レイアウト変更を含めて下工程の熱処理能力、整備・検査能力を増強し、上工程の能力に見合った量が出せるようにする。『リードタイム約30%短縮』が次期中期の目標だ」

――人材育成では。

 「働き方改革のベースは生産性向上であり、個人のパフォーマンスを上げる必要がある。重要なテーマはチームで担当させ、効率を上げるとともに若い世代に成功体験を積ませる。また情報の加工や活用に関する能力も磨かせ、アナログとデジタルのバランスが取れた人材を育成する。今年は検査部門の女性が2人になる。女性や高齢者が安全に安心して働ける環境づくりも進めていく」(谷山 恵三)