【特集】「教育勅語の暗唱やめた」

籠池前理事長の長女の胸中

インタビューに応じる森友学園理事長の籠池町浪氏=2017年12月

 大阪府豊中市の国有地を格安で取得し、進めてきた小学校の建設を断念した学校法人「森友学園」。共同通信は昨年12月、新しく理事長を務める籠池町浪氏(33)に約1時間半、インタビューした。大阪地検特捜部に詐欺罪などで起訴され、大阪拘置所で5カ月以上も勾留が続く前理事長の父泰典(64)、母諄子(61)両被告への長女としての思いや、学園の教育方針などを語った。(共同通信=大阪社会部・真下周、植田純司)

 ▽両親のアドバイス受けない

 昨年2月、国有地の問題が発覚した直後、夫妻が取材に応じた時は、(森友学園運営の)塚本幼稚園の園長室に記者を通し、大きな国旗をバックに“愛国幼稚園”の思いをぶちまけた。だが新園長でもある町浪氏が選んだのは、園児たちの教室。小さないすに座り、机を挟んで向き合った。終始、緊張した面持ちだったが、時折、笑顔も垣間見えた。

 ―森友学園関連のニュースはほぼ1年間、続いた。どんな年だったか。

 「大変とかつらいとか考える時間がなかった。正直、今から始まるという思いだ。4、5月あたりはマスコミに後ろを付けられたり、隠し撮りされたりした。私にとって幼稚園の中が唯一、安心できる場所だった」

 ―夫妻とは現在も接見禁止になっている。

 「おかしな状況だと思っているが、弁護士を通じたやりとりもしていない。(両親のことは)報道で知るだけだ。心配じゃないわけではない。今後、(2人が)学園経営にかかわることもない。両親のアドバイスを受ける選択肢はもうない」

 ―長女として、今のご両親の状況はどんな思いで見ているか。

 「自分の思いは捨てました…。自分の心の中で思うことは自由だけど、器用でないので、今は家族よりも、理事長としてやるべきことに集中している。負けず嫌いなので、それが精いっぱいとは言いたくないが(笑)」

 ▽裁判の行方

 ―前理事長を訴える立場になった。(家族で暮らした)豊中市の自宅は強制競売にかけられる可能性がある。心中は。

 「私が育ってきた家なので…苦しくないと言えばうそになります(涙)。親不孝かもしれないが、民事再生の手続きを取り、未熟ながら私の覚悟として、それしか方法がなかった」

 ―早ければ2018年にも裁判が始まる。

 「傍聴するかは分からない。その時に考える」

 ―(前理事長の泰典被告は昨年7月の逮捕前に国策捜査と批判して)国有地をめぐる問題は政治の関与が取りざたされてきたが。

 「私にはまったく分からないところだ。検察の捜査に協力してきた。民事再生の話とは直接関わらないので、発言は差し控えたい」

 ―国や大阪府の補助金を不正に受け取った罪に問われている。間近で夫妻の仕事ぶりを見てきた立場としての見解は。

 「(夫妻の逮捕時に、法人の運営の在り方を根本から反省するとした)見解を出した。今は(嫌疑の)内容がまだ詳しく出ていない。また新たな状況になれば発表させていただきたい」

 ―元保護者が「退園させられた」などとして起こした裁判はすべて和解した。園側から明確な謝罪がなかった、との不満もあるようだ。

 「謝罪の言葉も含めて、裁判の手続きにのっとり進めた。(従来の運営方針を)きちんと振り返り、いろいろ見つめ直したからこそ和解したので、ご理解いただきたい」

 ▽虐待していない

 ―裁判になっていないが、園の方針に合わないとして辞めさせられたとか、虐待を疑わせる証言をした人もいた。こうした疑念や不安にどう答えていくのか。

 「虐待はしていない。また、こちらから『(園を)辞めてください』と言ったこともない。ただ(諄子)前副園長は「バーン」とお母さん方に言う人で、そう感じられた人がいたことは問題だ。保護者との意思疎通を何より大切にしていくのが、私が理事長になり変わった部分だ」

 ―以前の塚本幼稚園は、教育勅語の暗唱など、他園がやらない特殊な取り組みで有名だった。

 「大きく世間を騒がせ、国会でも議論された。(教育勅語で)父母を大事にする、友達と手を取り合うという部分はどんな人にも大切。ただ掲げて読むからできるものでもない。日頃の生活の中から出てくるので、それを伝える心の部分が大事だと思う」

 ―カリキュラムや教育内容で変えた部分は。

 「精査して少し変えた。教育勅語(の暗唱)はやめ、(自衛隊のセレモニーなど)外のイベントにも出なくなった。その分、新しいことができるようになった。元々将棋とか多彩なカリキュラムを持っており、残すものは残す」

 ―以前は大音量で園内放送を流すなど、近隣住民との摩擦も絶えなかった。

 「これまで地域の声に聞く耳を持てていなかったかもしれない。今は早朝時間帯の静けさに配慮し、園内放送の音量も絞っている。近隣の方に『この期間は少しだけにぎやかにします』など、お知らせの手紙も出すようにした」

 ▽建物、どこかで活用を

 ―現在の園児数は60人台。民事再生計画が認可され、ひとまず幼稚園の存続が決まった。騒動の後、園に残った先生や子ども、保護者も少なからずいるが、(存続のために)園児数を大幅に増やさなければいけない。

 「前例のない立て直しになるが、乗り越えられないと思っておらず、試練と言っていただけたら。(残った人は)やっぱり塚本幼稚園のよさにかけてくださったのだろう。感謝しかない。ビラのほか、SNSも使って園児募集の情報発信を続けている」

 ―新体制ではどんな教育を目指すのか。

 「その子の存在で周囲が温かくなるような子どもを多く輩出したい。音楽や計算好きの子、友達のつぶれたお道具箱を丁寧にテープで貼って直してくれる子や、タオルを上手に折りたたむ子もいる。(社会には)目立つ人がいれば、陰で支える人もいる。一人一人の可能性を引き出すため、限られた時間の中で精いっぱいやらせてほしい」

 ―建設を断念した小学校の建物が、今後どうなるか注目されている。

 「いい建物です。私たちの思いもあるが、工事業者さんの思いもある。管財人の先生にお任せしながら、どこかで活用していただければと思う」

  × × ×

 【森友学園問題】学校法人「森友学園」が大阪府豊中市の国有地を8億円余りも値引きされた価格で取得していたことが昨年2月に発覚した。また、この土地で建設を計画していた小学校の名誉校長に安倍晋三首相の昭恵夫人が一時就任していたことなどが国会で追及されている。大阪地検特捜部は国や大阪府、市の補助金を詐取したなどとして詐欺罪などで籠池泰典前理事長と妻を起訴。近畿財務局長らの背任容疑などについても刑事告発を受けて捜査している。

学校法人「森友学園」が小学校建設を目指していた大阪府豊中市の国有地=2017年11月

Follow

共同通信

on

©一般社団法人共同通信社

47NEWS

全国47都道府県・52参加新聞社と共同通信の内外ニュース。地域の文化や活力を発信。 話題のニュースの核心に迫る署名入りコラム「47リポーターズ」もスタート。

最新ニュースを読む