知事選告示 長崎県政 継続か 転換か 政策掲げ 舌戦幕開け

 中村県政の継続か、転換か-。郷土の行方を占う知事選が18日告示され、舌戦が幕を開けた。「各施策をもっと前に」「開発優先から県民の暮らしを応援する県政へ」。現職、新人両候補は選挙カーで各地へ繰り出し、支持を訴えた。

◎中村陣営

 無所属現職の中村法道候補(67)は、長崎市内の神社で必勝祈願をした後、出陣式会場へ。拍手で出迎えた支持者らと笑顔で握手を交わし、式が始まると引き締まった表情を見せた。  自民党県連の加藤寛治会長は、2期8年の実績を評価した上で「圧勝し、継続して県政発展のために取り組んでほしい」と激励。県市長会長の田上富久長崎市長は「未来を見る目と現場を見る目の両方を持つ中村候補に、また県政を引っ張ってほしい」と述べた。  中村候補は、各政策を継続する必要性を強調し「県政の活性化のために全力を注ぐ」と意気込んだ。約600人に見送られ、島原半島3市に向けて出発した。

◎原口陣営

 無所属新人の原口敏彦候補(56)の出発式会場には、今回のイメージカラーにしている明るい緑のスカーフやネクタイを身に着けた約70人が集まった。

 「民主県政をつくる会」の代表世話人で県商工団体連合会の徳永隆行会長は「新聞には『厳しい戦い』とあるが、最近の市民と野党の結集のうねりをどう見ているのか。われわれは負けない」と気勢を上げた。20代の男性支援者や被爆者らもエールを送った。

 原口候補は、九州新幹線長崎ルートなど県政の大型事業の進め方を批判し、子育てや福祉政策の充実を熱っぽく訴えた。周囲の声援を浴びながら選挙カーに乗り込んだ。

◎第一声 要旨/中村法道候補

 知事就任以来、長崎県を元気な県にしなければならないと考え、人口減少や県民所得の低迷、地域活力の低下といった本県の構造的な課題に正面から向き合い全力で取り組んできた。結果、新規雇用者数や移住者数は目標を上回る形で増加し、高校生の県内就職率も過去最高となった。これらの施策をもっと前に進めていく。

 今後、健康長寿日本一の県をつくり、本県経済を支える新たな基幹産業を創出する必要がある。離島地域の産業振興と定住促進にも取り組み、県政を活性化させる。県民に、長崎に生まれて良かった、長崎に暮らして良かったと思っていただけるようこれからも全力を注ぐ。力強いご支援をお願いしたい。

◎第一声 要旨/原口敏彦候補

 県民が中村県政2期8年にどんな審判を下すのかが問われる選挙だ。1人当たり県民所得は全国45位にまで下がり、人口は5年で約5万人減った。もはや評価ははっきりしている。

 三つの約束をしたい。一つ目は税金の使い方を改める。大型事業優先から暮らしを応援する県政に切り替える。二つ目は県民の声を聞く。石木ダム建設で地権者と対話せず、諫早湾干拓事業で農民と漁民の対立をあおるのは行政の責任者がとるべき態度ではない。三つ目は、安倍内閣にものを言い、憲法9条を守る。

 キャッチフレーズは「人と人 つながれ長崎」。県民を分断し、対立させる県政を終わりにしようという願いを込めた。県民主役の県政を一緒につくろう。

◎有権者の声/「地元に働き口を」/「住みたい長崎に」

 知事選は、県政の課題と展望を見詰め直す4年に1度の機会。仕事、子育て、まちづくり-。有権者はどんなポイントを重視して、1票を託す人を選ぶのか。告示日の18日、県内各地で聞いた。

 人口減少が止まらない本県。特に若者の県外流出に多くの県民が気をもむ。対馬市厳原町の会社経営、山本博己さん(55)は「奨学金の返済補助など若者が地元に戻りやすくなる仕組みを」と提言。西海市崎戸町の無職、吉村芝子さん(82)は「地元に働き口がないと若者は出て行くだけ」として企業誘致や雇用拡大に期待する。平戸市野子町の漁業、楠富尚人さん(57)は深刻な後継者不足を嘆き、「漁業という仕事に若者がもっと魅力を感じるよう知恵を絞ってほしい」と訴えた。

 県外で就職活動中の長崎大工学部3年、福島一世さん(21)は「県内に誘致する業種をもっと広げてくれたらいいのに」とぼやきつつ、知事選では福祉や教育政策に関心を寄せる。「政策が充実していたら、長崎に住みたいと思えるかも」

 「お年寄りやその家族が暮らしやすいまちづくりを」。こう注文した南島原市北有馬町の自営業、松尾ミホさん(82)は「家族に迷惑は掛けたくないけど、施設に入るのは経済的に大変だから」と不安を明かした。小学生2人を育てる佐世保市稲荷町の自営業、池田弥生さん(33)は「医療費負担が大きい。これから給食費や教育費も上がらないか不安。子どもに配慮した施策に重点を置いて」と望んだ。

 賛否が割れている大型公共事業にも関心が向けられた。長崎市女の都3丁目の自営業、三瀬健司さん(49)は「新幹線より、観光客に泊まってもらう方法を考えた方がいい」と主張。東彼川棚町、パート従業員、久木元翼さん(39)は長引く石木ダム問題について「多くの人に興味を持ってもらえるようにしてほしい」と議論の活性化を期待した。

候補者の演説に聞き入る有権者=長崎市内

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