【新18年、分野別鋼材需要動向を探る】〈(3)建築向け〉非住宅向け中心に堅調 鉄骨需要530万トンの高水準継続

 2018年の建築用鋼材需要は、前年に引き続き堅調に推移するとの見方が大勢を占めている。国内建設需要は、非住宅を中心に案件は豊富だ。東京オリンピック・パラリンピック関連需要は、2020年の開催に向けていよいよ本格化しており、建設関連ではインバウンド対応のホテル建設が盛んに行われている。大都市圏を中心とした再開発案件も動き始めた。

 また、ネットショッピングの隆盛を背景に、物流倉庫についても大型案件を中心に需要が伸長。流通革命が進展する中で、大手不動産ファンドなどの投資計画も旺盛な状況が続いている。国土交通省の建築着工統計から試算する換算鉄骨量は、直近となる昨年11月が46万6千トンと11月単月としてはここ8年間で最も高い水準。1~11月累計では483万トンに達しており、ここ8年間で最も山の高かった13年の488万トンに次ぐ高水準となっている。

 ここ8年間で最高水準となる13暦年の換算鉄骨量は533万トンだった。17年も同レベルの量が見込まれ、18年も引き続き同水準の高い需要量が見込まれる。530万トンは長年の合理化に加え、人手不足も背景に、鉄骨ファブの加工能力のほぼ限界とされている。高炉メーカーも「今年いっぱいはメーカーロールのタイトな状況が続くことが確実」と断言している。プレスコラムメーカーなども、530万トンを超える近年では未曾有の需用量に対して繁忙を極めつつある。

 具体的な鋼材需要に結びつきにくかった中小案件も今年度下期以降、ようやく本格的な需要期に差し掛かった。ロールコラムや軽量形鋼などはフル生産の状況。それでも生産が間に合わないほどで、扱い筋では歯抜けにより逸注したとの声も聞かれる。足元では増大する需要に対して遅れている販売価格の引き上げを確実に行い、採算性を改善することが最大の課題。これに加え、人手や物流、素材などの需給がひっ迫する中で、供給責任をいかに果たしていくかが大きな焦点となってくる。プロジェクト案件を中心に機会損失を防ぐためにも、滞留在庫の抑制が重要となりそうだ。(村上 倫)

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