雪かき、ごみ出し…ご近所さんの困り事「カードゲーム」で発見

手伝ってほしいことが書かれたカードをやりとりするゲーム参加者ら=丹波市山南町小新屋

 ごみ出しや雪かきといった体力のいる作業、慣れないと難しいIT機器の操作など、身近な困り事を近隣住民で助け合う-。そんな地域づくりのきっかけにしてもらおうと、兵庫県丹波市社会福祉協議会が「困り事カード」で支援者を探すゲームを、市内の高齢者サロンなどで始めた。地方で高齢者の比率が増す中、住民組織も介護の一翼を担うことが期待されている。ゲームを通じて助け合う必要性のほか、地域以外の支援を求めなければならない課題も見えてくる。(岩崎昂志)

 丹波市山南町小新屋の公民館で先月下旬に開かれたサロンに60~80代の17人が参加した。市社協職員がカードゲームを紹介し、2組に分かれて楽しんだ。

 女性が「包丁研ぎ」という困り事が書かれたカードを掲げると、隣の男性が「上手やないけどできるで」と少し照れながら手を挙げた。「毛染めを手伝って」には「家が近いからできるよ」。しかし、別の女性が「雪かき」のカードを掲げると、数人が口々に「若いもんがおらんとなあ…」とつぶやく。車座にため息が広がった。

 公益財団法人さわやか福祉財団(東京都)が開発した「新・助け合い体験ゲーム」。支援してほしい事柄が書かれたカード180枚を机上に並べ、1人2枚ずつ取って順に掲げる。手伝える内容なら支援者として挙手。これは地域で解決できる問題だ。一方、誰も手を挙げなければ、その内容は「自分たちだけではどうにもできない課題」ということになる。

 参加者を一つの自治会に見立てれば、ゲーム結果はそのまま「地域の課題解決力」と言える。

 誰がどんなことで困っていて、近所で助けられる人は誰なのか-。参加した女性(70)は「近所の人にこまごまとした頼み事をするのは気が引けていた。ゲームを通じ、互いの困り事に気付けた」という。

 ゲーム導入の背景にあるのは、国が介護保険財政の窮迫を見越して導入を図る「地域包括ケアシステム」への対応だ。

 団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに、学校区など日常生活圏内で医療、介護、福祉などのサービスが受けられる仕組みづくりを目指すというが、生活支援や介護予防のサービス提供主体として自治会などの住民組織も念頭に置かれている。

 丹波市で高齢者サロンなどを助成する市社協も「地域包括ケアシステムを進めるには住民同士の日常的な助け合いが不可欠」とする。しかし、「何から始めればいいのか」と戸惑う自治会役員も多い。そこで「地域で話し合うきっかけになれば」とカードゲーム活用を発案した。

 今後、困り事カードで各地域の課題を洗い出し、その解決策を住民同士で話し合うツールにしていきたい考えだ。

 今回取り組んだ小新屋地区は65戸169人で、うち65歳以上は32・5%。自治会長の谷垣孝實(たかみ)さん(72)は「本当に高齢化が進んでから対策を考えるのでは遅すぎる。ゲームを契機として、高齢者同士でも助け合えることは何かを議論したい」と話した。

■支援ニーズ、掘り起こしが重要

 国などが進める「地域包括ケアシステム」では、高齢者への生活支援サービスの担い手が、行政主体からボランティアやNPOなどの住民主体へと軸足が移されようとしている。

 「新・助け合い体験ゲーム」を開発したさわやか福祉財団の担当理事・鶴山芳子さん(50)は「本来は自発的な住民の支え合いを制度として求められ、地域も行政も戸惑っている」とする一方、「助け合う社会へと地域が動き出す好機」とも指摘。「具体的な支援ニーズを掘り起こすことが大切だ」と強調する。

 同財団はこのゲームを自治体や住民組織、学校などに紹介し、ワークショップを続けている。参加者同士で地域課題の解決策を議論し「交流サロンを開設したい」とする動きもあったという。鶴山さんは「公然と『助けて』と言いづらい社会だが、声を上げるきっかけがあれば地域が変わることもある」と話す。

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 新・助け合い体験ゲームは個人でも購入でき、1セット1080円。同財団TEL03・5470・7751

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