
阪神・淡路大震災を契機に備蓄食としてパンを缶詰にしたストーリーを描く児童書「世界を救うパンの缶詰」がこのほど、東京の出版社から刊行された。開発者で「パン・アキモト」(栃木県那須塩原市)の秋元義彦社長(64)が主人公。パンを軟らかいまま3年ほど保存できるようにする苦労や、当時抱いた思いなどがつづられている。(大盛周平)
秋元さんは阪神・淡路当時、被災地に牛乳パンを2千個提供した。しかし、保存がきかないため半分以上が廃棄されたという。被災地から「軟らかく保存のきくパンがあれば」との声を聞き、秋元さんは開発に着手。パン生地を缶に入れたまま加熱し、1996年秋に「パンの缶詰」を完成した。
以降、東日本大震災や熊本地震など国内の被災地に約15万個を提供。2009年からは3年の賞味期限のうち2年が過ぎた缶詰を下取りし、海外の食糧難に苦しむ地域に届ける「救缶鳥(きゅうかんちょう)プロジェクト」も始めた。
これまでに22万個以上を届けた同プロジェクトは昨年、環境と社会に貢献する活動をたたえる環境省「グッドライフアワード」で最優秀賞を受けた。
児童書は、子供向け書籍を扱う「ほるぷ出版」(東京都千代田区)が小学校高学年向けとして出版。神戸に住んだこともあるやましたこうへいさんが挿絵を、ライター菅聖子さんが文を担当した。
秋元さんがパンの劣化を防ぐ方法を見つけ出すまでの苦労、缶詰の回収を迫られる危機、パン店を創業した父との思い出などがつづられている。
秋元さんは「私が今まで経験したことのほとんどが書かれている。(支援をしたいと思ったとき)アクションを起こすきっかけになってくれれば、うれしい」と話した。
A5変形判、155ページ、1512円。ほるぷ出版TEL03・6261・6691