伝統紡ぐ編み込み 三上さん、最後の作品 川崎市多摩区

世界の平和と繁栄願って――。西生田在住の美容師で、水引や組みひもを取り入れた独自のヘアスタイル「夢のある編み込み」を創りだした三上峰緒さん(92)=人物風土記で紹介=が、自身最後の作品という「天下泰平」を制作。川崎市市民ミュージアムで今月14日まで行われた「かわさきマイスター20年展」に出展し、多くの来場者が足を止めた。

 「夢のある編み込み」は、編む、結ぶ、色の組み合わせによって、慶弔の知識をヘアスタイルに取り入れた礼法と技法。スタイルとして美しいだけでなく、結び方や色の濃淡、組み合わせ方などで、一つひとつのデザインに意味が込められている。三上さんが小笠原流の宗家から学び、中国古代の思想と日本の伝統の両方を現代美容に融合させた。

 数あるファンタジック作品の集大成を飾る「天下泰平」は、世界の平和を願う作品。世の中が穏やかに円満に収まるようにと御縁結びや良縁結びなどの意味がある「円結び」が並び、慶弔の結びである陰陽の「鮑結び」がダイナミックにあしらわれている。三上さんは「陰と陽でやわらかく表現。平和の願いと結びの意味を、作品を見てわかってもらえたら」と語る。

 三上さんが作品を作るのは年に1つだけ。まず秋頃にテーマにする四字熟語を考えるという。「寝ても覚めてもそのことばかり。夢の中にもでてきて」と三上さん。アイデアをデッサンしながら髪型にどう取り入れていくかを考え、一つひとつ形にしてきた。体調の心配もあり、今後の出展は未定だが、「もっと多くの人に知ってもらいたい。見てもらえる場があれば」と思いは絶えない。

展示された「天下泰平」

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