世界史の道しるべに 建築家が19年かけ8万3千項目収録の年表作成

 年表づくりのきっかけは、都内の建築事務所で新幹線の駅など鉄道施設建設に当たっていた時のこと。顧客との雑談の中で、「日本がどんな戦争をやってきたか、自分はあまりに知らない」と実感したという。

 建築設計の仕事の傍ら、50歳から年表づくりを開始。53歳で事務所を早期退職してからは、歴史書約300冊を読み込んだ。パソコンで年月、場所、事柄、参考文献などの出典をこつこつと収録した。緻密な建築工程表を仕事で扱っていたことが役立ったという。

 記録した世界史の項目数は8万3070件。データをA4判で印刷すると約8千ページ分に上り、分厚い辞書の分量にも匹敵する。個別の出来事を簡単に検索できる工夫もした。

 最初の項目は約2億年前の地球の大陸形成、最後は2000年のチリ大統領選。例えば1937年7月の盧溝橋事件や日中戦争開始などの項目を、旧日本軍の連隊長や中国側の守備隊の部隊名も交え、細かく記述している。歴史上の人物の名前をできるだけ登場させたほか、参考にした書名や出版社などを明記し、後に利用者が検証できるよう工夫した。

 鈴木さんは「人の判断のベースになるのは歴史。特に近現代の日本が歩んだ歴史を知り、将来の歩む道を判断する材料がほしかった。制作の過程で、日本は近代からずっと戦争をしていた歴史にあらためて気づいた」と話す。市民への閲覧など、年表の活用方法も検討している。

 報告会は来月22日午後3時から5時まで、川崎区の喫茶室ルノアール川崎東口駅前店の貸し会議室で行う。参加費は600円(飲み物代)。申し込み・問い合わせは、夢工房の片桐さん電話090(7212)0573。

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