DRONEII、2018年版ドローン市場マップ発表。細分化、多様化する業界の今を知る

2018年版Mapは下記、記事文末よりPDFをダウンロード可能

2016年に引き続き、DRONE.jp提携先のDrone Indusry Insight社(以下:DRONEII)が2018年版ドローン市場マップ(Drone Market Environment Map 2018)を作成、発表した。世界中の各ドローンメーカーの分野と関係がドローン初心者にもわかりやすい様につくられている。2016年版と比較し今のドローン業界を見ていこう。

業界は、細分化し多様化へ

まずは、2017年のドローン市場を少し振り返ってみよう。昨年は、変化と発展は著しく。ドローン市場における誤解や失望を引き起こす誇大広告は、すでに淘汰され実業である企業が残ってきたと言える。ドローンに関する荒唐無稽な大げさなニュースの類は、確かに大きな関心を生むが、業界への信頼も失くしかねないことになりがちだった。しかしドローンはガートナーのハイプ曲線による「安定期(生産性の台地)」に達したという実感に伴い、ドローン市場を確実に導いて安定させるであろう、ドローン技術に関わる企業やユーザーについて考察するフェーズが来たと言えるだろう。

Drone Ecosystem Mapは、こうした発展が2018年にはどうなるのか、そしてさらなる今後はどうなっていくのか、考察するために役立つものだ。

まず、ドローン市場におけるカテゴリーまたは下位カテゴリーの中で、最も活動的で妥当と思われる企業の全体像が把握可能だ。ドローン市場に多大な影響を与える企業や個人に注目できるように、このマップには1000の企業や個人に絞ってある。そのためDRONEII側では、このマップは包括的なものではなく、そもそも全て網羅していないと言及している(と言いつつもほぼこれで業界は俯瞰できるだろう)。このドローン市場の多様性や広がりに焦点を当てているのだ。

2017年のドローン市場を振り返ってみると、ソフトウェアへの投資に明らかな動きが見られた。多くの企業は、ドローン機体自体ではなくドローンが収集した情報が、ユーザーに価値を与えていることに気がついた。その結果、マップには戦略的パートナーの劇的な増大という変化を生んだ。ドローン技術に関して言えば、他に類を見ないようなハードウェアであっても、それは商用ドローンの顧客が求めているものではない。完璧なソリューションを創造することが最善の道なのだ。結果多くの戦略的提携が起きているが現状だ。

2016年と2018年のマップを比較すると、ドローン市場に広まり、今後も続いていくであろう興味深い流れに気づくだろう。2016年のマップに載っていた企業(約711社)の10%は、すでに存在しない。360の新しい企業が加わり、ほとんどの分野において大きな動きが見られる。

しかし、2018年初めのCES2018開催中に起きたGroProのドローン分野からの撤退(想定内)という大きな変化に見られるように、こうした動きの中でトップに君臨し続けることは困難なことだ。今年は業界再編の大きな潮目の年になるのではないかと予想する。では、ドローン業界における最も重要な発展を詳しく見てみよう。

プラットフォーム製造業

●合併や買収、脱退や戦略の変換など、非常に多くの統合が起きている。3DR 社やPrecisionHawk社、Agribotix社は、ハードウェアから離れ、今はほぼ完全にソフトウェアへ移行した。これは大部分、DJI社の優勢というドローン市場の状況が引き金となっている。3DRは正式に、ハードウェア分野における失敗の主な理由として競争価格を挙げた。機体やプラットフォームのみを提供する企業は減少しているが、PRODRONEやDRONEVOTなど産業用に特化した企業は健在である。

●顧客の要望に応じた特定の業界における強い専門性へ注目が集まっている。農業や宅配システム、安全保障は、専門性の発展が著しいより大きな業界である。それは専門性により増大したとともに新たなニッチを創り出し、ユニークなセールスポイントを提供してきたものでもある。こうした分野には、固定翼やVTOL(垂直離着陸)機、軽飛行機などを含む。

●パッセンジャードローン(有人タクシー)、AAT(Autonomous Air Taxis)(空飛ぶ車やe-VTOLs(電気VTOL機))の分野は成長中でありこの分野への融資も多い。大企業は乗り遅れないように最善の投資相手を確保しているようだ。Terrafugia社はVolvoの子会社Geely社に吸収され、Aurora Flight Sciences社はBoeing社に吸収されたように著しい再編が行われている。また、Ehang社が娯楽用ドローンからAATドローンへと戦略変更をしたように、ドローン分野においての路線を変更する企業も多い。

●娯楽用ドローンの市場においては、ドローンレースのイベントやセルフィ(自撮り)ドローンが人気を博している。多くの企業はそれに関連したものを展開していかなければならないようだが、Parrot社は苦労の末にBebopを商用の目的へと移行し、Lily社の失敗によってMota Groupはブランドを買収し、DreamQil社はPlexiDroneのために借金を抱えた。またZANOもCES2018で今年復活をアナウンスした。

ソフトウェア

●資産運用管理のパターン認識を活用し、検知ソフトウェアに強い企業が進歩している。人工知能(AI)とディープラーニングを統合することが業界内で求められており、こうしたプログラムは今後さらに検知作業を自動化させ、次々と価値を提供していくことだろう。

●ソフトウェアにおける戦略的提携の多くは、部品から製品までのエンドツーエンド・ソリューションを提供するために行われている。それは企業や組織の多くがパズルの一部品だけでは不十分だと認識している。

●ドローンのデータを既存のプロセスに早急に統合させることのできる、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)と、そのアプローチが求められている。ドローンを既存のプロセスに組み込むという開かれた媒体(API)とそのツールは2017年に大きな波となり、2018年にはさらに顕著に発達するだろう。

●Airbus Aerial社やIntel Insights社のような飛行データ企業は、飛行により得られたデータの概念を新しいレベルへと上げている。仮想データ(VD)プラットフォームを衛星へ送り、飛行機やドローンからのデータによってドローン操作が楽になり、それに伴うリスクが軽減される。

●統合脅威管理(UTM)による国内外の企業提携が多く、徐々にこうした発展の結果が表れるだろう。Skyward社やAirmap社は、アメリカ連邦航空局(FAA)によるLAANC(Low Altitude Authorization & Notification Capability)の認定を受けた初めての組織となった。

サービス

●ドローン宅配サービスについての話題はよくなされるが、ついにマーケティングを越える影響を目の当たりにすることになる。ヨーロッパやアフリカで医療の宅配のために頻繁に飛行を行っている企業はMatternet社とZipline社だけだ。ドローンによる倉庫問題もまた増大している。

●ドローンショーを提供する企業は、ドローン技術における全く新しい応用の仕方を見せてくれた。Intel社のハーフタイムショーや、SQUAD DRONEのショーは、室内外のエンターテインメントという新たな時代を先導している。

●システムインテグレーション(SI)は、提供・創造されるとともに極めて重要なものになってきている。様々な業界がそれぞれに適したソリューションを求めており、それはつまり、業界それぞれのニーズに合った基準へと変えていく企業がますます増えるということだ。

●ドローンのアクセラレータープログラム(AP)(大企業がベンチャー企業に対して出資するために開催される)によって、著しく成長しているドローン企業の可能性が明らかになった。新しい企業が次々登場しており、2018年にはさらに増えるであろう。

●DaaSならぬDrones as a Service(DaaS)(サービスとしてのドローン)を提供している企業や個人は、大企業との契約が可能なところにまで成長した。こうしたドローンのサービスはまた、手間を省くような特定の仕事へ拡大している。つまりDaaSモデルによって、社内での効率化が可能になる。

アンチ・ドローン

●ドローン市場は巨額の資金と大規模な国際提携を伴って急速成長、市民の生活における新たなマーケットと言える。

●コンピューター使用会計システム(CUAS)の会議や博覧会で、ドローンの脅威や危険性について説明された。

●障害物の制限(連邦ネットワーク庁)や公共の場における健康問題(例えばペースメーカー)を含めて、物理的・非物理的なシステムには限界がある。

コンポーネントとシステム

●人気のある地域で高級な機械の飛行を行うのは、厳格な安全検査が求められるものであり、だからこそ新興企業や復活する企業といった移り変わりが激しいのだ。操作上の安全性に対する更なる認識と可能なソリューションが必要だ

●最新のドローン推進法が発達し、強力になるとともに必要不可欠なものになっている。ハイブリットシステム(バッテリー/燃料電池、ガス/バッテリー)により、ハードウェアに必要とされる最適なミッションが、より耐久性の強く、広範囲なものとなる。

●ほぼ売り切れ状態というFLIR(前方監視型赤外線)カメラは業界からの需要が高いのに対し、ドローンのカメラは今や室内飛行のために使われている。

●空中のドローンと地上とのコミュニケーションは一般的に非常にもろいものであるため、暗号化されたデータ・リンクは多くの人気を集めてきている。データとコミュニケーションの物流は、今後も最優先事項となり続けるだろう。

●ドローンの着地場所(「ドローン・ボックス」ソリューションとも呼ぶ)は、完璧なソリューションと考えられている。ドローンの上に屋根をつけ、ドローンが事前にプログラムされた新しい地を飛ぶ前に、ワイヤレスのバッテリーで充電・交換ができるようになったためだろう。

業界の挫折と苦労

●失敗や倒産を数多く見てきたことからも分かるように、クラウドファンディングは効果がないようだ。Bionic Bird社やMicro Drone社、FlyPro社、Lily社、Onagofly社、Globe Drone社などが挙げられる。

●特にヨーロッパでは競争が激しく、需要がまだ高くはないため、多くの企業が消えていった。

●Yuneec社は2017年3月にアメリカのスタッフの70%を解雇し、新しいCEOを迎え入れた。Parrot社は2017年1月、840人のドローンチームを290人に減らすと発表したが、それはおよそ66%の削減だった。Autel社も2017年2月に従業員を解雇し、GroPro社はドローン分野からの完全撤退を発表すると、200人が職を失った。こうした動きは全て、飛行マーケットがいかに不安定か、ということを表している。

●ドローンレースやセルフィ(自撮り)ドローンなどのニッチ分野は多くのベンチャー企業が成功しているようだが、広めることは不可能というのが実情だ。趣味としてのドローンを広めることは難しいからだ。DJIが「Tello」という、Ryze Techによりデザインされた99ドルのセルフィドローンを発表した今、競争はさらに激しくなることだろう。

解決のヒント2018

●ドローン操作やデータ分析における機械学習は、すさまじい発達を遂げている。

●自動化やドローン技術の導入は今後増えていくだろう。

●複合企業はドローン市場へ直接立ち向かっていくことだろう。時にはAirware社とCaterpillar社のように、大手との提携も喜んで行ってきたように、過去のベンチャー企業はニッチな解決策を思いついていた。しかし今、ドローン市場のより大規模な範囲でソリューションを提供しようと、Komatsu社とNVIDIA社のような大企業同士の提携も行われている。これは、人工知能(AI)のような話題に関連した物流に分類される提携といえる。IBM社やHitachi社、Qualcomm社、Mitsui社のような企業が、ドローン市場に直接的にでも間接的にでも影響を与えるであろう次なる提携を行うかどうか、という疑問が浮かびあがる。

●特に農業と宅配の分野において、中国というレーダーの下で多くのことが起こっている。

総括

メディアに関しても増減しているが、日本からは、DRONE.jpもラインナップ

こうした発展は全て、2018年がどれほどわくわくした年になりそうなのか、そしてそれはなぜなのか、ということを表している。ドローン市場はきっと、わくわくするような盛り上がりも、ガッカリするような盛り下がりも見せることだろう。多くの人は思いもしないような使い道ができるという新たな可能性とともに、既存の作業に統合する形でより成熟し、簡単なソリューションが生まれるだろう。Drone Ecosystem Mapは、誰でも指摘や活用のできるクリティカルなものになっている。素晴らしい、輝かしい2018年になりますように!

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