「東京CODE」軍地彩弓×「オギノマ」小木充×DIALOGUE ON TOKYO[わたしたちのTOKYOガイド]

パーク ハイアット 東京のディプロマット スイートで。軍地さん(左)と小木さん(右)

15年前ってどんな時代?

軍地:私たちがメトロポリターナで連載を始めて、何年かな?

小木:2014年の10月号からだから、もう3年以上ですね。

軍地:私を「オギノマ」のゲストにいつ呼んでくれるのか、ずっと待ってました(笑)。

小木:今回、やっと叶いましたね。今日はよろしくお願いします!

軍地:よろしくお願いします。ところで、今日の対談場所は何でパーク ハイアット東京なの?

小木:実は、パークハイアットを舞台に撮影された、ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』が、公開されてから15年が経つんですよ。そしてメトロポリターナも15周年。

軍地:なるほど、そういうことなんだ。

小木:映画の影響もあって、東京の代名詞的なホテルとして世界中から認識されているし、窓からは東京の街を一望できる。東京について話をするにはぴったりの場所じゃないですか。

軍地:あ、そういえばブリトニー・スピアーズの取材もここでした。しかも2003年に! 彼女は東京に来るとよくパークハイアットに泊まってたんだよね。

小木:軍地さんは、当時何をしてたんでしたっけ?

軍地:その頃は「ViVi」の編集部にいて、そのお姉さん版の「GRAMOROUS」の創刊準備もしてましたね。「ViVi」は当時50万部くらい発行してましたね。

小木:今では考えられない数字です…。出版業界もまだ元気でしたよね。

軍地:バブル後の失われた10年が急に上向いてきた時代でした。だから街がすごく面白かったの。

小木:海外の人たちから見た、東京の姿が変わったのもその頃からの気がしませんか?

軍地:それまでは、FUJIYAMAやGEISHAのイメージが強かったと思う。もっとリアルな日本の姿が伝わりだしたのは、その頃かも。そういえば思い出した! ブリトニーが来日した時に、渋谷109に行きたいと急に言いだしたんだよね。

小木:彼女は当時、カリスマでしたよね。日本のファッションも大好きだった。

軍地:渋谷109が大好きで、そこで買った〈LOVE BOAT〉のTシャツを着てPVに出たりして。そうやって、日本のカワイイカルチャーなんかが世界に発信され始めたのもその頃だったのかも。

小木:渋谷109は大人気でしたよね。洋服も雑誌もCDも売れていた時代でした。

軍地:ちゃんとものが売れてた。流行に乗ることを女の子も喜んでましたね。

SNSでいろいろ変わった

小木:iPhoneを持ち始めたのは?

軍地:確か2007年か2008年頃。仕事で、いきなりスマホを使ってマーケティングをしろって言われて…。スマホで売れる媒体を作りなさいと。

小木:取り組みが早かったですね。その頃はまだスマホのコンテンツってそんなになかった気がします。

軍地:当時はインターナショナルの出版社にいたので。だから世界レベルでは、スマホへのシフトが始まっていたんだよね。

小木:Twitterが始まったのはいつ頃でしたっけ?

軍地:登場したのは、ちょうどその頃だったと思う。当時、読者とのコミュニケーションツールとしてウィジェット(今でいうアプリ) を開発しようとしていたんだけど、Twitterの登場で、もうこれでいいよね、となったのを覚えてる。その後にInstagramが出てきた。

小木:SNSの登場でいろいろ変わりましたよね。生き方の価値観も変わった気がします。自分らしく生きる、ということが重要になってきたというか。

軍地:本当に。SNSの影響が強いと思う。個人の発信力が強くなったんだよね。それまでは雑誌やテレビがトレンドをリードしていたんだけれど、今は、ひとりの人間の発信からブームが起こって物が売れる時代。プライベートなブームが顕在化しているのはいまの時代の面白さだと思う。

最近の東京、どの街が面白い?

小木:東京の街も変化しましたよね。

軍地:原宿は変わりましたよね。15年前にカワイイで世界から注目されて、でも一方で〈H&M〉なんかの海外ファストファッションが進出してきたりして。2010年以降は、日本のアパレルは元気がなくなっていくような時代。でも、東京が持つ魅力であるカオス感は今も昔も変わらないと思う。

小木:新宿ゴールデン街はまさにそうですよね。ずっと昔からあるけど、新陳代謝を繰り返して若い人もいるし面白い人たちが集まる場所。外国人もたくさん来ます。

軍地:新宿は、マイノリティが露出している街。だからカオスで面白い。ああいう場所は、海外にもあまりないよね。私も何回目かの新宿ブームで、隣で飲んでる外国人がすごい有名な人だったり、若い子が議論をふっかけてきたりして面白い(笑)。いろいろな人たちが出会ってコミュニティが生まれていくのも楽しくって。

小木:サロン的な場所になってますよね。新宿以外だと、最近はどのエリアに行くんですか?

軍地: 東京の東側も面白いですね。蔵前や清澄白河とか。この辺は都心に比べて物件が安いから、何かを始めやすいみたいで。たとえばホステルが何軒かできているんだけど、1階がバーだったりしてここもコミュニティスペースになってる。IT系やクリエイター系など面白い人たちがいて、いろいろなことを発信している。

小木:物件が安いから、新しいことを始めたい若い人たちが集まって来る。そして、そこにコミュニティが生まれてムーブメントを発信する。NYのブルックリンと同じような気がします。

軍地: そうですね。ブルックリンと同じで古い物件をリノベして、ソーシャルグッドでオーガニックな感じ。ただ、東側は面白い場所がそれぞれ離れているから、ホッピングしづらくって(笑)。

小木:最後に、いい店を見つけるコツみたいなものを教えてもらえますか。やっぱりSNS?

軍地:もちろんSNSの情報も大事。でも、インスタの写真に写っている人たちが楽しいかどうかということも、重要な判断基準になってるかな。いい店は人が楽しそうにワイワイしているから。

小木:料理がインスタ映えしているからといって、美味しいとは限らないと。

軍地:そう。写真から何を読み解くかというのが大切。みなさん、写っている人の顔を見ましょう!

小木:SNSでもリアルでも、いい店を見分ける嗅覚は磨いていきたいですね。失敗を繰り返してでも勝率を上げていくしかない。年を重ねれば重ねるほど、食べることは重要になってきますから。まだまだいろいろと聞きたいのですが、まずは一旦、ありがとうございます!

軍地:では、続きは連載のオギノマで。ありがとうございます!

TOKYO CODE

#パーク ハイアット 東京

新宿パークタワーの高層階にある高級ホテル。開業は1994年。映画『ロスト・イン・トランスレーション』の舞台となり、東京を代表するホテルに。

#ブリトニー・スピアーズ

何かとスキャンダルの多いアメリカ出身の歌姫も現在は2児の母。ViViの表紙を飾ったのは、2003年の12月号。昨年には、15年ぶりの来日公演をした。

#渋谷109

文化村通りと道玄坂の分岐点にある1979年に開業した商業ビル。かつてこの場所は、恋文横丁と呼ばれ、ラブレターの代筆屋があったのだとか。

#iPhone

2007年に誕生したiPhoneは、たったの10年ちょっとで人々のライフスタイルを大きく変えた。いまでは日本のスマホ購入者の6割以上がiPhoneという調査結果も。

#カワイイ

日本独自の美を表す言葉も、語源をたどると、カワイイ→可愛い→かわゆし、となり本来は“恥ずかしい”や“かわいそうで見てられない”という意味を持つ。

#新宿ゴールデン街

新宿区歌舞伎町1丁目にある飲食店街。戦後闇市の流れをくむこの場所は、現在も東京を代表するカオスエリアとして存在感を放つ。

#ロスト・イン・トランスレーション

ソフィア・コッポラ監督による2003年に公開の映画。キャッチコピーは「ひとときの恋心、永遠の思い出。“トーキョー”であなたに会えてよかった。」

#ViVi

講談社が発行する赤文字系女性ファッション誌。1983年に創刊し、最盛期には発行部数50万部超えを記録。2005年には、姉妹誌『GLAMOROUS』も登場。

#LOVE BOAT

1994年に誕生したアパレルブランド。ヘソ出しTシャツ&ミニスカート、というギャルファッションを渋谷から発信して世を席巻した。2014年に終了。

#SNS

ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略。日本語版のf a c e b o o k とT w i t t e r が登場したのが2008年、Instagramは2010年のこと。

#海外ファストファッション

安くて手軽なファッションのこと。2009年の流行語大賞のトップテンにも選ばれた。〈ZARA 〉は1998年、〈H&M〉が2008年、〈FOREVER21〉は2009年に日本上陸。

#東京の東側

最近では、都心から少し外れた蔵前、北千住、人形町、清澄白河エリアが存在感を放つ。賃料が比較的安いせいか、新しいスポットが続々登場中。

#ホステル

外国人観光客の増加の影響か、ドミトリータイプの宿が都内に増殖中。コミュニティスペースとしても機能しているのが近年のトレンド。

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