TCR中東:開幕ラウンドは若手が躍動。アウディRS3 LMS、VWゴルフGTIがアブダビ制す

 ウインターリーグ制を採用し、2年目のシーズンを迎えたTCRミドル・イースト・シリーズの開幕戦が1月19~20日にアブダビのヤス・マリーナ・サーキットで開催され、オープニングのレース1をジャコモ・アルト(アウディRS3 LMS)が、続くレース2は先行車のペナルティにより繰り上げとなったルカ・エングストラー(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)が制した。

 TCR中東シリーズではピットレーン・コンペティションから参戦し、新たにアウディをドライブすることとなった17歳のアルトは、開幕戦の予選から早々にRS3 LMSの個性をつかみポールポジションを獲得。

 スタートでもその利点を最大限に活用し、後続を引き離す盤石の展開に。その後方、2番手には3番グリッドからスタートした、TCRインターナショナル・レギュラーのマット・オモラ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR DSG)がポジションアップ。

 その後、20周のレースを通じてルカ・エングストラー、フローリアン・ソーマ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)のリキモリ・チーム・エングストラー勢2台とともに、フォルクスワーゲン・ワンメイクともいうべき壮絶な3番手争いを展開する。

 オモラ、エングストラー、ソーマの並びで進んだ3台のマッチアップは、5番手ソーマが14周目とファイナルラップに再三チームメイトのインに飛び込むトライを見せたものの、ともにオーバーテイクはならず。

 最終的にそのままのポジションをキープしてレースはチェッカー。イタリア人のアルトが後続を2秒近く引き離してのポール・トゥ・フィニッシュを達成。2位にオモラ、3位エングストラーの表彰台となった。

 続くレース2はリバースグリッドのポールからスタートしたコスタ・パパントニス(セアト・レオンTCR)が痛恨のジャンプスタート。その恩恵を受け、フロントロウに並んでいたアルベルト・ベスコニ(アウディRS3 LMS)と、5番手から飛び出したピットレーン・コンペティションのロレンツォ・ヴェリア(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)がなんと首位に浮上し、レースを牽引。

 その後方では、レース1で惜しくも表彰台を逃したソーマが怒涛のチャージを見せ、2周目には3番手にまで浮上。続く3周目には、そのソーマの背後にエングストラーが上がってくるなど、実力者が虎視眈々と上位浮上を狙って足場を固めてくる。

 そのままの勢いで、このチーム・エングストラー2台はベスコニのアウディRS3 LMSを仕留め、それぞれ2番手、3番手にポジションアップ。先頭を行くヴェリアをロックオンすると、12周目には3台のマシンがバンパー・トゥ・バンパーの状態となり、その全体ギャップはコンマ8秒以内にまで縮まっていく。

 その集団内で機を伺い15周目に仕掛けたソーマは、トップのヴェリアが閉めたドアを強引にこじ開け首位奪取に成功。その反動でワイドになったヴェリアのゴルフGTIは、エングストラーにも先行され3番手にドロップ。

 しかし、この壮絶なバトルが仇となり、首位に浮上したソーマのマシンはサスペンションを破損し、わずか2周後にはピットイン。そのままリタイアという無念の結末となってしまう。

 これで労せずしてトップに躍り出たエングストラーが、このままフィニッシュラインを迎えるかと思われたファイナルラップ。レース大半でリードラップを奪い、勝負を牽引してきたイタリア人、ヴェリアが起死回生のダイブを敢行し、エングストラーを弾き飛ばし再度の首位浮上に成功。

 そのままヴェリアがトップチェッカーをくぐり、わずかに遅れてエングストラー。そして最後の表彰台となる3位には、レース1勝者のアルトやオモラを抑えたカイ・ジョーダン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)が入る結果となった。

 しかしレース終了後、主催者側は首位でチェッカーを受けたヴェリアに、最終周のオーバーテイク・ムーブに対しペナルティを課すことを決定。レースタイムに30秒が加算され8位にドロップ。

 最終的に、優勝は17歳のティーンエイジャー、エングストラーのものとなり、2位にジョーダン。3位にジャコモ・アルトが入る形となった。

 これで週末に大量45ポイントを稼いだアルトが最初のポイントリーダーとなり、2位にわずか1ポイント差でエングストラー、3位に33ポイントのオモラが続いている。

 TCR中東のチャンピオンシップ第2戦は、この後1月26~27日にドバイ・オートドロームでラウンド3、ラウンド4が開催される。

© 株式会社三栄