海底の遺物に思いを 「平安丸」焦点に企画展 氷川丸姉妹船

 日本郵船の貨客船「氷川丸」の姉妹船で、西太平洋チューク(旧称トラック)環礁内に沈む「平安丸」に焦点を当てた企画展「グランブルーの静寂〜もうひとつの氷川丸〜」が、横浜市中区の日本郵船歴史博物館で開かれている。沈没から74年を経た現在もほぼ原形をとどめる船体の写真と、同型の氷川丸とを見比べることで「海底の遺物に思いをはせて」と担当者は呼び掛ける。4月22日まで。

 平安丸は1930年11月、大阪鉄工所(現・日立造船)で竣工(しゅんこう)した。姉妹船である氷川丸、日枝丸とともに横浜と北米を結ぶシアトル航路で活躍。太平洋戦争中は旧海軍に徴用されて特設潜水母艦となり、44年2月のトラック島空襲に遭い沈没した。水深16〜37メートルの海底に横倒しになっている。

 企画展では、水中写真家や現地の日本人ダイバーらが撮影した平安丸の船体や機関室、プロムナードデッキなどの写真を氷川丸の写真と並べて展示。計器類や船内備品などを検証し、その多くで同じ製品が使われていたことが分かる。氷川丸が戦後に改装される以前の様子も平安丸の写真からうかがうことができる。

 学芸担当の小川友季さんは「チュークに沈む数十隻の日本商船は老朽化が進み、次第に失われつつある。氷川丸の姉妹船をはじめ、多くの貨客船が沈んでいる背景も知ってほしい」と話している。

 関連イベントとして、同地の海に沈む全ての船と航空機の撮影に成功した水中写真家古見きゅうさんの講演会や、飛鳥2での撮影や講座を手掛ける海事プレス社の佐藤敦彦さんを招いた撮影会が開かれる。

 入館料は一般・大学生400円、シニア・中高校生250円、小学生以下無料。月曜休館。問い合わせは同館電話045(211)1923。

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