目玉法案、行く末は

 「小さく軽いものが、ひるがえりながら落ちるさま」と擬態語ばかりを集めた辞典にある。きのう長崎市では、雪が「ちらちら」舞った。首都圏を雪が混乱させたその後で、列島は丸ごと強烈な寒波に見舞われている▲折しも一年のうち寒さが最も身に染みる「寒の内」にある。ひと月ほど前に冬至を過ぎて、日は少しずつ長くなっているのに、寒さはひときわ身にこたえる▲やっと日が差すように見えて、冬の出口はまだ見えない。そう考えると、この取り組みも「寒の内」にあるのかもしれない。安倍内閣が今国会の目玉とする「働き方改革」である▲首相が仕掛けた衆院解散で昨秋の法案提出が見送られた。今になって「目玉」と言えたものではない気もするが、首相は戦後の労基法の制定から「70年ぶりの大改革」と胸を張る▲残業時間に上限を定め、他方で一部の専門職を労働時間の規制から外す-としており、対して野党は「残業代ゼロ法案」と難じる。甲論乙駁(おつばく)あるだろう。正面対決をさらに期する▲苦笑いが本分のサラリーマン川柳に切ない句を見つけた。〈通勤の逆方向に向かいたい〉。苦笑いの出る幕もない、働く現場の一断面だろう。「ちらちら」は「小刻みに明滅するさま」も表す。光がちらちら見えるかどうか、議論に目を凝らす寒の内である。(徹)

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