モリブデン、国際価格急騰=3年ぶり高値 チリ・中国の減産で品不足、ステンレス鋼材に波及も

 高張力鋼やステンレスなどの副原料となるモリブデンの国際価格が急騰している。高炉メーカーやステンレスメーカーが使う三酸化モリブデンの国際価格は今週、12ドル(純分価格)を突破、直近1カ月で約25%上昇した。12ドル超は約3年ぶりの高値。チリや中国など生産国の減産をきっかけに品不足が鮮明となっており、市場では当面、高値が続くとの見方が強い。価格上昇が対日価格に波及するのは必至で、モリブデン含有ステンレス鋼材など関連鉄鋼製品の価格にも影響しそうだ。

 トレーダーなどが先高を見越して品物の確保に動く中、年明け以降、供給者側が唱え価格を連続的に引き上げている。

 需給ひっ迫のきっかけとなったのがチリ、中国での減産。チリでは銅製錬の副生品として三酸化モリブデンを生産する大手供給者が昨年末、モリブデンの減産を非公式に表明した。一方、中国では環境規制による生産抑制や冬場の減産などでモリブデンのプライマリースメルターが減産に追い込まれた。

 鉄鋼向けのモリブデン需要は昨年後半から堅調に推移している。特に底入れが顕著なのがエネルギー・自動車関連鋼材やステンレス向けの需要。こうした実需に加え、先高観の台頭による思惑買いが重なり、市場価格が急激に上昇した形だ。

 価格上昇局面は少なくとも、中国の春節明けまでは続く公算が大きい。一方、春節後は中国の生産が回復し、需給ひっ迫感が後退するとの見方もある。また昨年末以降の価格上昇ペースがあまりにも急なため、3月もしくは4月以降に高値修正局面に入る可能性もある。ただ、チリの減産は当分続くとみられ、「価格が大きく下がることはない」(市場関係者)との声もある。

 高炉やステンレスメーカー向けの対日価格は海外のスポット価格に連動する。昨年末以降の急激な上昇を受けて、対日価格も2月以降、急上昇するとみられ、モリブデンを使うステンレス鋼材などで生産コストの上昇を製品価格に転嫁する動きが広がる見通しだ。

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