【大紀アルミの経営戦略】〈山本隆章社長に聞く〉アセアンでの生産3割増へ 海外サプライヤーに「経営コンサル」でも協力

――通期の連結業績予想は売上高が前期比17・8%増の1777億円、経常利益が同28・1%増の60億円。達成すればいずれも過去2番目の好業績に…。

 「需要環境は指標のLMEがなだらかに上昇するなどまずまずで、当面悪くなる要因はない。メーカーにとり居心地が良い状態であり、珍しく安定している。連結としては昨秋に第2溶解工場が竣工したインドネシアを中心に生産が拡充した。安全面には細心の注意を払いたい」

――通期販売量予想は、連結の伸びが単独を上回る。

大紀アルミ・山本社長

 「連結の販売量は同8・9%増の44万1千トン、単独が4・1%増の24万6千トン。アジアの拠点はすべてがフル操業だ。第2溶解工場の竣工したダイキアルミ・インドネシアは月産約1万トン、ダイキアルミ・タイが同1万トン超、ダイキアルミ・マレーシアが同2500トン、ダイキオーエムアルミ・フィリピンは月産700トン。アセアンでの生産量は17年が18万4千トンだったが、18年の生産能力は24万2千トンで31%アップする。この2~3年アセアン諸国の経済は低調だった。例えば自国で完結せざるを得ないインドネシアのローカルの競合メーカーはこの間、景気悪化と金利高で投資が難しい状況だったが、当社はインドネシアに約20億円を投じそれが生産立ち上げの時期に入った。国内は5工場(亀山・滋賀・新城・結城・白河)で需要家をカバーしている」

――ロシアのアンキューバー(ANCUVER、ア社、本社・ウラジオストク)との業務提携については?

 「アルミ二次合金メーカー・ア社は1997年の設立で、月産能力7500トンで直近実績が3150トン。年間売上高5500万ドル。そもそも当社とロシアとの縁は深い。ソビエト連邦当時のアルミ輸出を担ったラズノインポルト公団と取り引きを皮切りに、ローカルの二次合金メーカーPTM(ペルミ)などと関係を深めてきた。2001年にはロシア代表事務所をモスクワに開設。ア社との業務提携の骨子は、ア社が18年に生産する鋳物・ダイキャスト用アルミ二次合金5万トン以上の内85%を大紀アルミが扱い販売するというものだ。資金や生産管理、合金技術の供与、当社の北米拠点・ディトコ(DITCO)を使ったサプライチェーン構築についても支援する」

 「海外のサプライヤーに対する大紀アルミのスタンスは、単にモノを購入するだけにとどまらない。その会社がどうなれば良いかを真摯(しんし)に話し合い、場合によっては資金支援も行う。PTM社、デルタアルミ(中国広東省の肇慶市大正アルミ、大紀が出資)や古くはシグマがその最たるものだが、いわば〝二次合金経営コンサルタント〟との姿勢で臨んでおり、それが相手先に評価されているのだと思う。ア社は極東ウラジオストクで唯一の二次合金メーカーであり、日本市場に近いことが業務提携を結ぶ決め手になった。ア社は地場のスクラップを使い月産3千トンという適正規模だから優位性がある。彼らは規模を拡大したいだろうが、仮に1万トンへと拡大すれば海外から素材を輸入せざるを得ず、コストが一気に上昇する。適切なアドバイスをすることで、ミスリードを防ぐことも提携企業の役目だ」

――聖心製作所(滋賀県)のダイキャスト事業強化は?

 「総額7億円投じ、加工機を数十台増設し競争力をつけた。従来の赤字体質は脱却し、来期売上高は前期比51%増の17億円を見込む。聖心以外の国内の投資は、環境関連が中心となっている」

――中国政府は3月からスクラップ輸入で新基準を打ち出しているが…。

 「中国の環境への取り組み方は真剣。デルタなどは当面問題ない。逆に、環境問題を積極的にクリアすれば後発メーカーでもチャンスが出てくる。新基準は影響が大きいだろう。中国は3月1日から99%以下の金属スクラップの輸入が禁止される。このため、ゾルバ(ミックスメタル)などは中の不純物が問題になりかねないと危惧している」(白木 毅俊)

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