中村候補 訴えの変遷 初出馬時は「個人」 今回は「政策」 きめ細かさ半面、総花的

 2月4日に投開票される知事選は、中村県政の評価が大きな焦点となる。3選を目指す中村法道候補(67)の政策には、県議から「きめ細かい」「総花的で伝わりにくい」と賛否が聞かれるが、これまで選挙戦で何を訴え、それがどう移り変わっているのか、リーフレットを見比べてみた。

 リーフレットの大きさは全て同じだが、2010年の初出馬時は、政策よりも略歴や趣味など候補者紹介にスペースを割き、写真を多用。中央官僚出身のライバル候補を意識するように「長崎」の文字を繰り返し使い、地元色をアピールした。14年の前回選挙は一転、施策の紹介に重きを置き、27項目を列挙。今回はさらに37項目に増やした。

 施策の文言は変われども「人」「産業」「地域」づくりという根幹は一貫している。キャッチフレーズの変遷を見ると、8年前はその実現に向けて「こぎだし」、前回は「ステップアップ」を図り、今回は「夢をかたちに」すると訴える。福祉や教育、観光などの幅広い分野で施策を列挙しているのも特徴。逆にそれが総花的と評されるゆえんともいえそうで、長崎大経済学部の山口純哉准教授(地域経済学)は「批判的に見れば、パンチがない。人口や財源が減り、職員数も限られる中、どこかに力を入れるか、どこかを抜くしかない」と指摘する。

 2期8年での変化もうかがえる。例えば少子化対策。最初は「妊娠検診の助成」と具体的に掲げ、前回は「結婚・出産から育児までの一貫した少子化対策の推進」と対象を拡大。さらに今回は「周産期医療体制の拡充と子育て支援施策の充実」や「待機児童ゼロ」を追加した。

 また今回は「健康長寿日本一の県づくり」やIoT(モノのインターネット)による高齢者の見守り体制構築も盛り込んだ。国の施策にのっとったもので独自性や目新しさはないが、時代の流れを反映したい意図がにじむ。

 一方、九州新幹線長崎ルートや人口減少など、いまだ解決や実現に至っていないものも多い。中村候補は「スピードの違いはあれど、おおむね取り組んだ」としつつ、未達成と認めるのは航路・航空路の物流体制強化。具体的には、中国・上海と結ぶ貨物船に、トラックのコンテナを載せた荷台ごと積み込み、運転席だけ付け替えて運ぶ「シームレス物流」などだ。ある県議は「すぐに解決できないことは分かるが、もっとスピード感がほしい」と指摘する。

 こうした状況を踏まえ、山口准教授は「(中村候補は)これまで全体のことは十分取り組んできた。今後は強い分野に絞らないと伸びずに(他県との競争で)埋没してしまう」と話している。

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