長崎 3位守る 向(国学院大)古里で区間賞

 久しぶりに走った古里が、自分の原点を思い出させてくれた。長崎の17区向(国学院大)は、地元東長崎の沿道からの大声援に、区間賞と男子MVPの獲得で応えた。「いかに多くの人に育ててもらったかを実感した」。その表情は晴れやかだった。

 鎮西学院高時代、全国都道府県対抗駅伝などで活躍。周囲の期待を一身に受けた。ところが、大学に入るとけがに苦しんだ。自分は強いというプライドと、何もできない歯がゆさとの間で、葛藤する毎日。主将を務めた今季は、初めての箱根駅伝で2区を走ったものの、途中で低体温症を引き起こして区間20位に終わった。

 県下一周駅伝は、大学のユニホームを着る最後の機会。以前から熱望していた“地元17区”での出走は気合が入った。14区の再スタートから1分半以上開いたトップとの差を縮め、日見峠越えの8キロ地点前後で逆転。区間新に迫る勢いで快走した。

 懐かしい景色の中で、初めて駅伝に挑戦した中学3年時を思い出した。走る楽しさや、応援される喜び。それは、シビアな大学生活でいつの間にか忘れていた、自分の原点だった。

 この春からマツダ(広島)に所属するため、今回がラストランのつもりだ。実業団では今まで以上に結果を求められるが、「走る楽しさは忘れたくない」。21歳のエースは古里に背中を押され、新たなステージへと旅立つ。

長崎の16区中村(青雲高、右)から17区向(国学院大)にたすきリレー=長崎市

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