来年度、生石灰価格上昇へ 秩父石灰、10%値上げ、鉄鋼メーカーのコスト押し上げ

 転炉や電気炉で脱酸用途などに使われる生石灰(きせっかい)が4月以降、値上がりする見通しが強まってきた。運送費や燃料費の上昇を受けて、石灰メーカーの生産・出荷コストが大幅に上昇しているためだ。関東地区の有力メーカー、秩父石灰工業(本社・東京都中央区)はすでに値上げ方針を固め、ユーザーへの要請に入った。他のメーカーも追随する公算が大きい。高炉メーカーや電炉メーカーの生産コストを押し上げる要因となりそうだ。

運送費が高騰

 秩父石灰工業は来年度上期出荷分の生石灰の販売価格(持ち込み価格)を10%程度値上げする。値上げ幅は輸送距離によって異なるが、1トン当たり1千~2千円。運送費の急騰と、焼成用燃料の価格上昇によるコスト増を吸収する狙い。

 コスト増で特に深刻なのが運送費。秩父石灰では、顧客への配送でトラックを利用。すでに運送業者から4月以降の大幅値上げを通告されたという。石灰製品の配送では、短納期を求められるケースも多い。こうした場合は、ドライバーの確保や高速道路利用などで運送費が大幅に跳ね上がるケースもあるとみている。

 トラック業界では慢性的な人手不足に加え、運転手の拘束時間に絡む当局の指導強化を背景に、人件費が急騰している。生石灰はトラックによる陸送が主体で、他の石灰メーカーも同様のコスト増に見舞われるのは確実。

 同業他社でも運送コスト上昇を理由とした値上げの動きが出てくる可能性が高い。

 鉄鋼業界では、購入する原料・資材価格の上昇が鮮明になっている。原料では主原料の高止まりに加え、ここにきて合金鉄価格の上昇が急。資材では電気炉用の黒鉛電極が4月以降、大幅に上昇するほか、耐火物も上昇の公算が大。また運送費の上昇は鋼材輸送も同様。資材価格の値上がりが鋼材価格に波及するのは必至だ。

© 株式会社鉄鋼新聞社