金属行人(1月29日付)

 寒波の襲来で連日の降雪、低温の厳しい天候。無駄な抵抗とは分かっていても、文句や嘆きなどが出てくる。そんな折、束の間ではあるが雪に覆われた北の大地を踏みしめた。最低気温はマイナス10度。夜中にストーブをつけ、わずかな明かりを頼りに仕入れたばかりの本に目をやっていた▼すると、机の上に何者かが這い上がって来る。何だろう。こげ茶の6本足、体長は2センチほどだろうか。カメムシの一種と分かったが、部屋の外は一面雪で覆われ、夏や秋に活動するカメムシに耐えられる環境とは到底思えない。だが、執念深く生き続けている。そのことに驚き感心するとともに、いとおしささえ感じた▼「虫たちの越冬戦略」(北海道大学図書刊行会刊)という書を見ると、厳寒の中でも虫たちの多くは体の組織を変えるなどして寒さに耐え、春が来るのをじっと待つようなのだ。生命のたくましさ、自然への順応性には「参った」とつぶやくしかなかったが、我々も同じ生命体である以上、順応し自然と調和し、模索していくんだろうな、とも感じた▼鉄の世界、自動車の世界、産業界全体も「違うステージ」に入ったという。その真偽はともかく、虫たちに見習い「しぶとく生きていく」ことが自然なのだろう。

© 株式会社鉄鋼新聞社